星のひとかけ

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伝統と、伝説のお菓子といっしょに…

2024-12-09 | 文学にまつわるあれこれ(妖精の島)
先月25日に書いた(>>) 室生犀星さんの本のなかにこんな文があって…

 尾張町の森八という菓子舗に出している喫茶店で、僕は芥川君と汁粉をたべたが、芥川君はこんな美味い汁粉はたべたことがないと言って、菓子の伝統の古い金沢を褒めていた。
   「金沢に於ける芥川龍之介」室生犀星
     『深夜の人・結婚者の手記』講談社文芸文庫 所収

、、金沢に住む犀星さんのところを芥川が訪問したときの記憶をつづった文章なのですが、 金沢での芥川さんはとても楽しんでいた様子です。 

たしか 芥川文さん(奥さま)の回想記では 芥川は胃腸が弱かったようで、 特に神経的に患っていた晩年では なにかの菓子に生姜が入っていたと後から言われただけでお腹をこわしてしまったと書いてあった記憶がありますが(うろ覚えです…) 金沢での龍之介さんはお元気そうです。 

それで、 金沢の伝統のお菓子を愉しむ芥川さんの描写にひかれて、 わたしも金沢のお菓子が食べたくなってお取り寄せをすることにしました。 年末年始のお休みにいただこうと思うので もう少し暮れ近くに届くのですけど、、

旅先でいただく その土地伝統のお菓子っていいですね。 前に金沢を訪れた時には 美味しい「きんつば」をいただいた思い出があります。

 ***

上記の犀星さんの本のところで書いたように、 あれから 昭和初期の 戦争がはじまる前あたりの本を何冊か並行して読んでいるのですが、、 胸さわぎが高まっていくような時代の空気と、 なんだか殺伐とした昨今の事件だとか 海外の様子だとかに ちょっと疲れて… それでこんな可愛らしい表紙の本を手にしました⤵



『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』トラヴィス・バルドリー著 原島文世・訳 創元推理文庫

内容を知らず手にしたので、 創元推理だったし 傭兵と書いてあったし、 てっきり退役した傭兵がふたたび何かの事件に挑むミステリだと思ったら、、

いえいえ、 エルフやドワーフやオークやノームといった妖精世界の住人たちの物語なのでした。 元傭兵だけど妖精、、 主人公は元傭兵のオークなんです。。 オークって『指輪物語』ではサルマンに仕えてたとっても怖くて邪悪な種族じゃなかった? 

この『伝説とカフェラテ』は、 そんな先入観や通説や思い込みのいろいろが 読んでいくうちにだんだんとひっくり返されていく、 ちょっと異色のファンタジーで、、 ファンタジーとはいえ 物語は《珈琲など誰も知らない街に珈琲店を開く》というとってもリアリスティックなもの。 戦闘ばかりの暮らしを捨てて、 珈琲というやすらぎに夢を託し 種族もさまざまの住人の間で信頼やつながりを築こうとする… 

珈琲の香りや 表紙にあるような美味しそうなシナモンロールを初めてあじわって、、 じっと目を閉じてその香りや味覚をたしかめている、、 そんな描写が微笑ましいです。。 ほんとに 珈琲の香りや焼きたてのベーカリーの香りって 人を(オークをも)うっとりと幸せな気持ちにさせるし、 ゆっくりとそれを味わえる時間て 本当に《やすらぎ》ですものね。。

ちょっと思いました… 爆弾や地雷なんてものではなくて、 たとえば甘い甘いスイーツの香りや、焼きたての香ばしいパンの香りや、 うっとりするような珈琲の香りが弾け飛ぶ《地雷》なんてものがあったら…? みんながうっとりとして空腹になって戦意喪失してしまうような そんな弾薬があったら…? 


 ***

ひさしぶりにオークやエルフやノームやドワーフといった言葉を見たら、 なんだかとてつもなく懐かしいような愛おしいような、、 長年会っていない大好きな友に逢いたいような、無性にせつない気持ちになって、、

この冬には 昭和初期の読書に加えて、 その合い間に エルフやホビットの世界にも再び浸ろうと強く強く思いました。。


妖精の国の喫茶店、、 行きたい… ♡




椅子で小さな足をぶらぶらさせているノームの隣で珈琲のみたい…

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