星のひとかけ

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百年前の「ファッション・ショオ」

2024-12-12 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
先月書きました 昭和初期の日本の文学についての読書のつづき・・・

仏文学の翻訳者そして詩人として有名な 堀口大學さんが昭和10年に出版した第一随筆集『季節と詩心』が、 講談社文芸文庫にあるのを知り、 まさに戦間期の欧州と日本の両方を知る最適の文学者と思い、早速読むことにしました。

エリュアアル(と大學さんは書いてる)や、 ヴァレリイや、 コクトオや、 マダム・コレットの同時代、、 でも今日は文学の話ではなくて、 この『季節と詩心』という本の冒頭に、 堀口大學さんの1933年(昭和8年)3月16日の「日記」が載っていて…

  目がさめると雨の音。春雨らしく、しっとりしたひびき。・・略・・
  三越の洋書部へ電話でエリュアアルの詩集”LA VIE IMMEDIATE” を頼む。・・略・・


このあと午後の記述になり、、 「朝日講堂のファッション・ショオを観に行く。満場立錐の余地なし…」

そのあとは 紀伊国屋書店で洋画展を見て、 松坂屋で舞台芸術展を見て、 銀座の街で永井荷風先生に出くわして 一緒に珈琲を飲み、 先生と別れてさらに夜は 日比谷公会堂の雅楽演奏会へ、、 など 忙しい一日の「日記」が記録されています。。

ファッションショーに美術展に演奏会に、、 昭和8年の銀座・丸の内界隈はこんなにも華やかに様々な催しがあって人々が繰り出していたのね… と少しおどろきました。

、、先月の室生犀星の昭和10年の記述(>>) 「今のようにトゲトゲしい時勢」…というのに較べると この堀口大學の日記は2年前なのだけれど、 とても華やいで穏やかそうにみえる、、 でも昭和8年のできごとをウィキで見れば、、 1月、2月には大学教授や教員が検挙され、 小林多喜二が獄中で殺されている。 そして3月には M8.1の昭和三陸地震があって、 それは上記の日記の2週間前の事、、

そういう諸々を考えると 人の暮らしも世界も、、 一面では決してわからないもの、、 ひといろではないことを痛感します・・・

 ***

上記の日記の 昭和8年の「ファッション・ショオ」 いったいどんな感じだったのかしら… と、いちおう動画で検索してみたのですが やっぱり日本のものでは残っていないようでした。

でも、 1920年代や 1930年代のファッションショーの映像は youtube にも載っていて、 あの鐘のような形をした女性の帽子や、 ストンとした形のワンピースなど、 映画のなかでしか見たことのない20年代のお洋服を着たモデルさん達がランウェイを歩いていました。 20年代にはまだレコードや音響設備は普及していなかったのか、 弦楽の楽隊がランウェイのそばで演奏している様子になるほど~と・・・

堀口大學さんがご覧になった「ファッション・ショオ」では どんな音楽が流れていたのでしょう、、




第一次大戦のことを(とうぜんまだ第二次は始まっていないから…) 堀口さんは「欧州戦争」とお書きになっていますが、、 その欧州戦争が終結したあとに新しい文学や舞台芸術や絵画がうまれ開花して来たようすが この本からも読みとれます。

あの鐘のような形のお帽子とワンピース、、 そっくりそのままの20年代ファッションを一度してみたかったな。。



それで永井荷風先生と珈琲をいただきましょう…
 

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