星のひとかけ

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光線の圧力: 『三四郎』

2010-06-16 | 文学にまつわるあれこれ(漱石と猫の篭)
きのう、 メロトロンさんからコメントをいただいて、、 

宇宙を永遠に旅する「ボイジャー」のことを思い浮かべていた矢先、、 こんなニュースが載ってました。 「宇宙のイカロス 太陽光で輝く姿」、、(asahi.com>>

、、、そうでした、 この「イカロス」は、 宇宙でヨットのように帆をひろげて、 光を受けて進むのでした。。。 風もない宇宙で、、 どうやって? と最初おもったら、、 「光の圧力」を帆に受けるんですって。。。 光に「圧力」って、、あるの?? そんな話題をTVでやっていましたっけね。

「光の圧力」で思い出しました。 夏目漱石の『三四郎』の中で、 三四郎が 野々宮さんの「光線の圧力」の実験を見せてもらうシーン。 確か、 野々宮さんは 東大の物理学の院生で、 研究室でひたすらその光線の粒子を 箱の中で飛ばす実験をしていたのでしたね。 、、この 野々宮さんの実験は、 漱石のお弟子さんで物理学者だった 寺田寅彦さんから聞かせてもらった話を使ったのだということでした。

、、そのあと三四郎は、 今で言う「三四郎池」のほとりに来て、、 野々宮さんの実験は 現実世界に何の関係があるのか全くわからないけれども、、 なんとなく自分も 「いっそのこと気を散らさずに、 生きた世の中と関係のない生涯を送ってみようかしらん」、、などと思うのです。 、、、そんな三四郎がふと眼をあげると、、 池の向こうの丘に、 夕日をうけて 着物に団扇をかざした女のひとが立っている。。。 (その女性が美禰子なんですけど)、、 さっきまで野々宮さんの生き方に感化されそうになっていた三四郎は、 やっぱりすぐに「現実世界」に引き戻されてしまうのです、、、 若いね(笑)

『三四郎』の季節はめぐっていくのですけど、、、 なんだか 三四郎は夏の小説、 という感じがします。 三四郎池の鬱蒼とした緑、、 美禰子が落として行った白い薔薇、、 三四郎と奇妙な出会いをした (でも私がいちばん好きな)広田先生の大好物の 水蜜桃。。。 

、、話 逸れました。

漱石の時代には、 野々宮さんの行なっていた「光線の圧力」の実験は、 いったい現実世界となんの関係があるのか まだまだ わからない時代でしたが、、 100年たって、 光の圧力は 立派に宇宙帆船「イカロス」に現実に利用されることになったのですね。。。 寺田寅彦さんも、 そして漱石も きっと、 興味津々でこの話題を耳にすることでしょうね。

ひさしぶりに 寺田寅彦さんの随筆も、、 読みたくなりました。

、、 そうそう、、こんな本もありましたね、、、
漱石とあたたかな科学―文豪のサイエンス・アイ 』 小山慶太著 (Amazon.com)