どんな本でも 予言書になりうる、、というのはリチャード・バックなんかも書いていたことですが、、 自分が今読んでいる本と現実がリンクするような、、 まるで現実に引きずられるように本が自分のもとにやってきた、、とか錯覚すること しばしばあります。
3週間ほど前から読み始めた イアン・マキューアンの『土曜日』(新潮クレスト・ブックス 小山太一訳 2007年 Amazon>>)

物語は9・11から2年後のロンドン。 未明に目覚めてしまった主人公がまだ暗い窓のそとを眺めていると、火を噴きながら飛ぶ航空機を見る。 テロなのか? 9・11以後の世界に生きる人間が抱かざるを得なくなったこの 「不安」、、そこからこの物語が始まる。 男の脳裏にうかぶさまざまな思いが、克明に綴られていって、それによって 次第にこの男や周辺のことが少しずつわかってくる、、、 たった一日「土曜日」の出来事を記した長い長い物語。
9・11以後の世界を 自分が知っている作家がどう書くか、というのはなんとなく前から関心があったので、 たいへん興味深く読み始めたし、 マキューアンの丹念な心理描写はそれは見事で、、。
ブッシュの対イラク侵攻に英国ブレア首相も同意を示し、まさに戦争がはじまろうという時期の設定も的確だし、 そんな中で「燃える飛行機」を見てしまったところから始めるなんてすごいとも思ったけれど、、
初めの4分の1くらい読んだところで、 現実のほうで ボストンマラソンのテロが起こって、 犯人の背景がよくわからないまま住宅街での捜索がつづいて、、、 なんだか落ち着かず 先週までこの本を読むことが出来なくなってしまった。。
***
ボストンの事件も、 国家間の組織的な背景があったかどうかは今のところ疑わしいけれど、、 9・11以後の現代人は、 そういう国家的・宗教的対立に不安を覚えながら、 同時に もっとちっぽけな 個人的な疎外感からくる暴力にも怯えなければならない、、、
まさに『土曜日』もそういう物語だった。 タイムリーといえばタイムリー。 リアルといえばリアル。。。 でも・・・
でも・・・ (とつぜん私情全開になりますが)
主人公の状況がわかってくるにつれて 「はぁ?」… と目線が斜めになってきちゃったのだ。。 主人公は有能な脳神経外科医、 妻は弁護士、 家族を愛し、 ロンドンに自宅と高級車を所有し、 休日の朝には同僚とスカッシュ、、 夜には娘・息子や義父が集まってディナーの予定。。 しかもその義父は高名な詩人でフランスのシャトーに住み、、とか、、
いや、だからこそ その完全な日常を失うかもしれない 「言い知れない不安」に怯えるのだ、、と思い直してみる。
以前に、 ダニエル・クレイグが大学教授役で主演した映画 『Jの悲劇』>>(マキューアンの原作『愛の続き』)のことを書きましたが、 その物語とも共通する。 恵まれた階層の知識人の 平穏で理性的な日常がこわれていく恐怖。 、、似ているなぁ、、と思いだしながら気づいた。。 要するに、 英国でイアン・マキューアンを読む人というのはきっとそういう人たちなんだ。。
***
もうひとつ、、 個人的に 「はぁ?」… となったところ、、
主人公の息子、、 これが学業はさっぱりで唯一 完全な家族構成から外れるかと思いきや、、 音楽の才能に恵まれて、 ブルースギタリストとして活躍しつつある。。。 なぜブルースギタリスト・・・
読んでると、 ジャック・ブルースに教えを受け、 クラプトンにも目をかけられ、、 ロン・ウッドとは共演の機会も得た、、。。 2003年? はたちそこそこの青年が? ロンドンのブルースギタリスト?? (売れないだろ…)
しかもこの息子、、 家族と同居してる、、 (それはない!・笑)
まぁね、、 これだけのいい家の子だから、、 ヘヴィメタもなんだし、 ラッパーやDJでもないかもしれないけど、、 ブルースってどうなの、、? 前にここでも書いた「セントジェームス病院」>>も作中に出てきたりするのだけど、、 あの歌の打ち棄てられたような遺体の背景と、この坊やの階層って違いすぎでしょう、、、
、、と、、 妙に細かいところに(描写が克明なだけに) 突っ込みたくなって、、 この恵まれた階層にはたまには「言い知れない不安」に苛まれてみるのもいいかもよ、、などと意地悪になってしまったり。。。
***
思うに、、 英国って地震もないし、 ハリケーンの被害とかも聞かないし、、 飢饉にみまわれたかつてのアイルランドと違って ロンドンの裕福な知識人にとって、 日常を脅かすのは人為的なものだけなんだ。。 だから何としてでも排除すべきで、 自分たちの理知と科学は必ずそれに勝らなければならない。。
すっごくなるほどなぁ、、と思ったところは 脳外科医の主人公がこう思うところ。。 人間の 脳という物質がどのようにして思考をもち、 意識というものをつくりだすのか、、 自分が生きているうちには無理でも、 必ず解明される日がくる。 「科学者と研究施設が存在するかぎり」
「これこそが、自分が抱く唯一の信仰だ。 この世界観には崇高なものがある」
まさにこの理知への信仰が、 世界の中における英国の知識人の立ち位置なのでしょう。
、、ところで、
冒頭の 「燃える飛行機」を見た時、 2003年の主人公は手掛かりを得るためにテレビをつけたりしましたが、、(とうぜん即座には情報が得られませんでしたが) 、、 2013年のいまは すぐにtweetされるのでしょうね。
あと10年後にはどんな世界になっているのかな。。。
(タイトルのレイヤー・ケーキについてはこちら>>)
3週間ほど前から読み始めた イアン・マキューアンの『土曜日』(新潮クレスト・ブックス 小山太一訳 2007年 Amazon>>)

物語は9・11から2年後のロンドン。 未明に目覚めてしまった主人公がまだ暗い窓のそとを眺めていると、火を噴きながら飛ぶ航空機を見る。 テロなのか? 9・11以後の世界に生きる人間が抱かざるを得なくなったこの 「不安」、、そこからこの物語が始まる。 男の脳裏にうかぶさまざまな思いが、克明に綴られていって、それによって 次第にこの男や周辺のことが少しずつわかってくる、、、 たった一日「土曜日」の出来事を記した長い長い物語。
9・11以後の世界を 自分が知っている作家がどう書くか、というのはなんとなく前から関心があったので、 たいへん興味深く読み始めたし、 マキューアンの丹念な心理描写はそれは見事で、、。
ブッシュの対イラク侵攻に英国ブレア首相も同意を示し、まさに戦争がはじまろうという時期の設定も的確だし、 そんな中で「燃える飛行機」を見てしまったところから始めるなんてすごいとも思ったけれど、、
初めの4分の1くらい読んだところで、 現実のほうで ボストンマラソンのテロが起こって、 犯人の背景がよくわからないまま住宅街での捜索がつづいて、、、 なんだか落ち着かず 先週までこの本を読むことが出来なくなってしまった。。
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ボストンの事件も、 国家間の組織的な背景があったかどうかは今のところ疑わしいけれど、、 9・11以後の現代人は、 そういう国家的・宗教的対立に不安を覚えながら、 同時に もっとちっぽけな 個人的な疎外感からくる暴力にも怯えなければならない、、、
まさに『土曜日』もそういう物語だった。 タイムリーといえばタイムリー。 リアルといえばリアル。。。 でも・・・
でも・・・ (とつぜん私情全開になりますが)
主人公の状況がわかってくるにつれて 「はぁ?」… と目線が斜めになってきちゃったのだ。。 主人公は有能な脳神経外科医、 妻は弁護士、 家族を愛し、 ロンドンに自宅と高級車を所有し、 休日の朝には同僚とスカッシュ、、 夜には娘・息子や義父が集まってディナーの予定。。 しかもその義父は高名な詩人でフランスのシャトーに住み、、とか、、
いや、だからこそ その完全な日常を失うかもしれない 「言い知れない不安」に怯えるのだ、、と思い直してみる。
以前に、 ダニエル・クレイグが大学教授役で主演した映画 『Jの悲劇』>>(マキューアンの原作『愛の続き』)のことを書きましたが、 その物語とも共通する。 恵まれた階層の知識人の 平穏で理性的な日常がこわれていく恐怖。 、、似ているなぁ、、と思いだしながら気づいた。。 要するに、 英国でイアン・マキューアンを読む人というのはきっとそういう人たちなんだ。。
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もうひとつ、、 個人的に 「はぁ?」… となったところ、、
主人公の息子、、 これが学業はさっぱりで唯一 完全な家族構成から外れるかと思いきや、、 音楽の才能に恵まれて、 ブルースギタリストとして活躍しつつある。。。 なぜブルースギタリスト・・・
読んでると、 ジャック・ブルースに教えを受け、 クラプトンにも目をかけられ、、 ロン・ウッドとは共演の機会も得た、、。。 2003年? はたちそこそこの青年が? ロンドンのブルースギタリスト?? (売れないだろ…)
しかもこの息子、、 家族と同居してる、、 (それはない!・笑)
まぁね、、 これだけのいい家の子だから、、 ヘヴィメタもなんだし、 ラッパーやDJでもないかもしれないけど、、 ブルースってどうなの、、? 前にここでも書いた「セントジェームス病院」>>も作中に出てきたりするのだけど、、 あの歌の打ち棄てられたような遺体の背景と、この坊やの階層って違いすぎでしょう、、、
、、と、、 妙に細かいところに(描写が克明なだけに) 突っ込みたくなって、、 この恵まれた階層にはたまには「言い知れない不安」に苛まれてみるのもいいかもよ、、などと意地悪になってしまったり。。。
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思うに、、 英国って地震もないし、 ハリケーンの被害とかも聞かないし、、 飢饉にみまわれたかつてのアイルランドと違って ロンドンの裕福な知識人にとって、 日常を脅かすのは人為的なものだけなんだ。。 だから何としてでも排除すべきで、 自分たちの理知と科学は必ずそれに勝らなければならない。。
すっごくなるほどなぁ、、と思ったところは 脳外科医の主人公がこう思うところ。。 人間の 脳という物質がどのようにして思考をもち、 意識というものをつくりだすのか、、 自分が生きているうちには無理でも、 必ず解明される日がくる。 「科学者と研究施設が存在するかぎり」
「これこそが、自分が抱く唯一の信仰だ。 この世界観には崇高なものがある」
まさにこの理知への信仰が、 世界の中における英国の知識人の立ち位置なのでしょう。
、、ところで、
冒頭の 「燃える飛行機」を見た時、 2003年の主人公は手掛かりを得るためにテレビをつけたりしましたが、、(とうぜん即座には情報が得られませんでしたが) 、、 2013年のいまは すぐにtweetされるのでしょうね。
あと10年後にはどんな世界になっているのかな。。。
(タイトルのレイヤー・ケーキについてはこちら>>)