長崎の坂の多い街並を人物が昇っていくと、目の前が塞がっていたのがそれを通り越すといっぺんに視界が開けるという点で、失明するとともにある種突き抜けた世界に至る、ちょっと宗教性を感じさせる物語のモチーフを画にしている。眼がだんだん悪くなっていく主人公が階段を昇り降りしていると、それだけで自然なサスペンスが生まれる。東京の場面でもさりげなく階段を背景に多用していた。教室に張り出している子供たちの習字が「天地」(だったかな、天がついたのは確か。後註・やはりそう)というのも、おそらく偶然ではない。凧を上げたり、庭木に撒く水が空に向かうところを撮ったりと、ところどころ空、というか天のモチーフが入ってくるのだから。
前半、時制を交錯させながらあまりストーリーと関係なさそうなカットがふっと入ってくるのだが、後で考えてみると、モンゴルの平原は日本の起伏の多い地形とコントラストにもなっているようだし、ウナギの蒲焼きが焼けているインサート・カットは眼が見えなくなった人間が心で見ている映像かと思わせる。考え過ぎか知れないが。
お寺の場面は、端正な構図、九州弁(笠智衆がそう)のせいもあって小津をいやでも思わせる。寺がどこかエキゾチックな南方風で、キリスト教の教会とごっちゃになっても違和感はない。豪華客船を作っているドックの向こうにハングルを船腹に書いた船が航行しているのも、長崎らしい。といった具合にあちこちに触発力を見せる緻密な演出。
(☆☆☆★★)
本ホームページ
前半、時制を交錯させながらあまりストーリーと関係なさそうなカットがふっと入ってくるのだが、後で考えてみると、モンゴルの平原は日本の起伏の多い地形とコントラストにもなっているようだし、ウナギの蒲焼きが焼けているインサート・カットは眼が見えなくなった人間が心で見ている映像かと思わせる。考え過ぎか知れないが。
お寺の場面は、端正な構図、九州弁(笠智衆がそう)のせいもあって小津をいやでも思わせる。寺がどこかエキゾチックな南方風で、キリスト教の教会とごっちゃになっても違和感はない。豪華客船を作っているドックの向こうにハングルを船腹に書いた船が航行しているのも、長崎らしい。といった具合にあちこちに触発力を見せる緻密な演出。
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