prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ニュー・ワールド」

2006年05月11日 | 映画
虫の鳴き声だけのタイトルバックなんて、およそ昨今のアメリカ映画離れした作り方。
テレンス・マリックらしい一種アニミズム的な映像表現が全編に貫徹されている。これだけ大掛かりな映画でも作家性は一点も曲げないのが、芸術家としてちょっと別格扱いされているゆえんかもしれない。
代わりにストーリー性や一般的なキャラクター描写は大幅に犠牲になっている。
いくら宣伝とはいえ、ラブストーリー寄りにして「タイタニック」と比較するというのは、ウソが過ぎますぞ。

しきりとカメラは太陽を仰ぐ。イギリス人ジョン・スミスとポカホンタスとの最初の頃の会話でも、「太陽」がキーワードになっていた。
水の中から原住民を捕らえたショットなど、「天国の日々」でリチャード・ギアが撃ち殺された姿を水の中から捕らえたショット同様、人間以外の何者かの視点。
続けて見るとイギリスの庭園の極端に幾何学的な造形は、ほとんど異様に見える。

もっとも、アニミズム寄りとはいっても原住民の素朴な生活を称え、西洋近代を批判するといった作りというわけでもない。ポカホンタスは結局、近代の生活に同化していくのだし。
ナレーションが多用されるのもマリックのスタイルだが、場面によって語り手が変わっているのも、世界が引き裂かれた感じを出しているよう、「シン・レッド・ライン」ほど違和感なし。
(☆☆☆★★)



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