prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「日本のいちばん長い日」

2007年09月03日 | 映画
後半で天皇の「御聖断」に対して納得せず、あくまで徹底抗戦・本土決戦を唱えて叛乱を起こす青年将校たちは2.26事件の亡霊の蘇りのよう。

昭和天皇が姿をはっきりと見せず、現実とも抽象ともつかないぼかした形で描かれているのは、メジャー系映画で天皇を表現する時の慣習的な「逃げ」なのだろうが、現実の天皇というものが見えなくなっていてあるいは見ようとしないで、自分の観念の中の天皇に方に忠誠を捧げてしまう青年将校の心性の反映ともとれる。

将校たちのファナティシズムに映画そのものが調子を合わせている感じで、黒沢年男の脳の血管が切れそうな芝居は見ものには違いないけれど、ちょっとついていけない。
こういう「純粋さ」を美しいとは感じないよう心がけている。

力作には違いないが、岡本喜八監督の作品としては全然ユーモアがないのは物足りない。「真面目くさっている」分、逆に俗受け狙いとも見える。事実、岡本作品で最大のヒット作のはず。
怪奇大作戦「狂鬼人間」の「日本刀の狂人」役でも有名な大村千吉の狂いっぷりご愛嬌だが。

オールスターキャストには違いないのだけれど、わずかに新珠三千代を除いて全員が男、というのも閉鎖的。
(☆☆☆)


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