アート・フィルムかと思ったら、「プリンセス・ブライド・ストーリー」ばりの割とわかりやすいメタフィクション。
現実の人物とお話の中の人物を同じ役者が二役で演じるのは「オズの魔法使い」いらいの定石。
ただし、お話に現実が介入し、現実にお話が介入する構造の組み立てはごく通りいっぺん、ウィリアム・ゴールドマンみたいな手だれのようなわけにいかない。二時間もあるとおしまいの方はダレる。
代わりにヴィジュアルの凝りようが見もの。オリジナリティ優先の衣装(石岡瑛子)と世界各地の風景のコラボは、かつてのパゾリーニ作品のモダンアート版といった観。
「落下」というモチーフからすると、ラストでまとめて引用される本物のサイレント時代のスラップスティック・コメディアンたちの身体を張った転落ぶりが強烈すぎて、他がふっとんでしまう。
(☆☆☆)