鈴木清順独特のつなぎ方は、このプログラムピクチャー・ベースの一作でも、後年のアート・フィルム風の作品群とそれほど頻度は変わらない。
前を歩いていた女学生たちが脇道にそれて姿を消した、と思ったらまた前を歩いているなんてつなぎなど、公開当時のふつうの観客はなんだと思ったろう。
昭和初期のバンカラと純情が混ざった「坊っちゃん」の後輩的雰囲気がよく出ている。
主人公が若くても特に成長する話ではないので、後半かなり展開が散漫になる。
主人公が愛読するのがストリンドベルイの「赤い部屋」(ベルイマンの「叫びとささやき」の深紅の部屋のもとという説もある)というのが今見ると珍しい。だいたい、ストリンドベルイは今ほとんど劇作家としてだけ知られていて、小説はほとんど読まれていないだろう。