本物の空手家を起用しての一作だけれど、一般的なカンフーなどの格闘技ものとかなり作りが違う。
真剣を構えた憲兵との戦いなど荒唐無稽なはずなのだが、踏み込みがすごくて素手の方の攻撃が先に当たるのに説得力がある。えんえんと戦っていないでもっぱら一瞬で決まる。
クライマックスの同門同士の戦いだけはえんえんと戦うのだが、ここだけ白黒になるのは内田吐夢監督「宮本武蔵 一乗寺の決闘」がもとだろう。
戦いが終わって泥まみれになった二人がほぼ左右対称になって横たわり、周りを赤い花が囲んでいるのは黒澤明の「野良犬」だろう。
憲兵がやたら横暴でこの非常時に空手などやっている時か、と言いがかりをつけるのだが、あまりに型通りの悪役ぶりで白ける。牛島辰熊が東条英機暗殺を企てていたりとか、思想的な過激さと武道とは近しいものがあるのだけれど、そういうところを描いたドラマも見てみたい。
全体に人物配置がぐらぐらしていて、クライマックスが自然に盛り上がってこないのは困ります。
(☆☆☆)