一人二役は役者としての腕の見せ所であるのはもちろんだが、ここでは片方の役がサダム・フセインの息子のウダイ・フセインだというところが主演のドミニク・クーパーの演技にもとめられるもののランクをさらに上げていて、それに応えている。
父親の独裁者サダム・フセインがまともに見えるくらいウダイの人格破綻者ぶりはひどいもので、それは映画だから大げさにしているのではなく、むしろ抑えているくらいらしい。当然、影武者の方が引きずられて暴力的な傾向を見せたりするが、一方で逆に影武者のまっとうな方が重しになってあまりにひどい人格破綻ぶりがリアリティを保っているようでもある。
当然のように英語が使われているが、製作国はベルギー。なんで?
監督のリー・タマホリは凄惨な暴力描写にデビュー作「ワンス・ウォリアーズ」以来の容赦のなさを見せる。そういえば、そろそろ一周忌になる大島渚監督「戦場のメリークリスマス」の助監督やっていたのだったな。
(☆☆☆★★)