明治以来の日本の暗殺事件をオムニバス形式で描くのだが、桜田門外の変に始まり、大久保利通、星亨などのさまざまな暗殺がそれぞれ場所も方法も撮り方も趣向を変えてダイジェスト風に描かれる。
初めのうち短い殺し場が続くから飽きはしないが、いかんせん政治的背景もそれぞれのキャラクターも描いていないのでいかにも軽く感じられるが、これが千葉真一が小沼正を演じる血盟団事件になると一転してまるまる一本分くらいの時間を使って普通の青年がテロリストになるまでをみっちり描く。
前半でストーリーを無視して見せ場だけ続ける形式にしたことで、論理やイデオロギーでない一種ファナティックな感覚で人が動く原理を捉えていて、それが割りと説得力を持つ。
今みたいにテロリストというと思考停止気味にとにかく狂信者・絶対悪としか描かれないのとは違って、純粋な青年のある種の高揚感やロマンティズムと結びついているのがありありとわかる。千葉真一が好演。いよいよテロを決行する寸前に水を一杯飲むのが、刀に水を打つような感覚。
井上日召を片岡千恵蔵をやっていて、自然なカリスマを感じさせる。
「226」の青年将校たちが処刑されていくところで、「天皇陛下万歳!」とそれぞれ絶叫しながら頭から血しぶきをあげて絶命していくシーンが凄絶。
こういう場面から日本映画もテレビも逃げるようになったなと思わせる。