prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「小さいおうち」

2014年02月03日 | 映画
これ、「家政婦は見た!」的なシチュイエーションではあるのだね。ただし、表面は立派に取り繕っている家も内部から覗いたらどろどろ、というばかりではなく、お手伝いさんの目を通して不倫を表面には出さず、非常に間接的に含みを持たせて描いているのが、節度ではある。しかしその一方でどこか生臭い猥雑な感じがあちこちに見られるのがこれまでの山田洋次作品とは違うところでもある。作家というのは高齢になるとどこか突き抜けることがしばしばあるが、そうなのだろうか。

板倉(吉岡秀隆)のスケッチブックに書かれた絵に、女中のタキの顔が見える、それをタキ自身が見ているのかどうかはっきりしない。描き忘れた、というより、どこか年取ったタキが記憶から消し去った部分のような感じもする。
家の子供に絵を教えるシーンがあったら、ラストにもっとすんなりつながったと思う。

若者代表である妻夫木聡が昭和十年代の歴史について、妙に左翼公式主義的な認識を振り回す。日教組の教師に学んだのか、と思ったくらい。いまどきの若者の昔のことに対する認識を描こうとすると、「永遠の0」にしてもそうだが、政治的立場関係なくどうにも型通りになる。
山田洋次はれっきとした日本共産党のシンパだが(選挙の時にしばしば応援している)、公式史観ではすり抜けてしまう実際に当時生きていた人の微妙な感情を暗示と省略を巧みに使って掬い上げようとしている。


ラスト近くに出てくる絵本ショップ、エンドタイトルと照合するとクレヨンハウスだろう。「風が吹くとき」(核戦争を老夫婦の視点から描いた作品)が画面の手前にピンボケにして写っているのは狙いと思える。

エンドタイトルで出るが、フィルムがコダックというのが不思議な感じ。フジではフィルムは作っていない、あるいは現像できないというわけでもないはずだが、長編映画では使う量が違うか。
スコセッシが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」をあくまでフィルムで撮ったというが、こだわる監督はこだわる。

戦争中の停電している夜の場面など思い切って暗くして撮っている。本当に見えるか見えないかぎりぎりで、それが時代の暗さと一致していた。デジタルだともっと鮮明に写りすぎたのではないか。

「寅さん」(ほとんど高羽哲夫撮影)だと基本夜の場面でも明るく鮮明に撮っていたが、高羽が亡くなって長沼六男が撮影を担当するようになって、かなり画面が暗くなった印象がある。

オープニングの火葬場の煙突から出てくる煙(「小早川家の秋」ね)から、小さいおうちに置いてある赤いヤカンまで小津印を配しているのが妙な感じ。

セット撮影の利点を利用してか、おうちの外景などちょっとづつ作り物っぽく、主がおもちゃメーカーの重役ということもあって何かおもちゃじみて見えたりする。空襲シーンなど、ミニチュアくささをむしろ積極的に出している。
(☆☆☆★★)

人気    ブログランキングへ


本ホームページ


公式サイト

小さいおうち@ぴあ映画生活

映画『小さいおうち』 - シネマトゥデイ

2月2日(日)のつぶやき

2014年02月03日 | Weblog

2年前、約5万5千人の署名を集めて原発住民投票を求めたが「5億円かける価値な市」と拒否した橋下氏。しかし今回出直し選挙となれば、その4~6倍の費用がかかる。松井氏が当選した前回の府知事選だけで20億円もかかっている。住民の要望でもない出直し選挙に20~30億円かける価値こそ無い。

家畜人六号【小暮 宏】さんがリツイート | RT

2)議会の構成を自分の思うような形で引っ張りたいのであれば、きちんとした説明責任を果たしてこそリーダーでしょ。兆円単位の予算を預かる自治体の長として「辞職」をちらつかせるやり方は陳腐としか言いようがないですね。なぜなら出直し選挙で「民意」は我にありと再選されたとしますね。

家畜人六号【小暮 宏】さんがリツイート | RT

【劣化コピー】マジで依存症を心配した方がいい。なんでまったりしてるー。  オリンピックでトルコに行こう。 rekkacopy.com


「チェインド」予告編 猟奇殺人鬼の監禁飼育を描いたサスペンススリラー movie00.seesaa.net/article/386241…
デヴィッド・リンチの娘が監督というのと、「フルメタル・ジャケット」のヴィンセント・ドノフリオが監禁殺人鬼というのがお楽しみ。「大脱出」にも出てました。


「DVD上映です。劇団四季は来ません」とマジメに書いているのが可笑しい。 pic.twitter.com/zPvbKA6xmH


【本棚登録】『漫画家超残酷物語 (ビッグコミックススペシャル)』唐沢 なをき booklog.jp/item/1/4091800…


【これ聴いてます】ヒンデミット:ヴァイオリン協奏曲/ウェーバーの主題による交響的変容/協奏音楽(五嶋みどり/北ドイツ放送響/エッシェンバッハ) ml.naxos.jp/album/ODE1214-2 #nml グラミー賞受賞作ね。


いわゆる脚本は作らないで、いきなりコンテを描き下ろしてしまうスタイルの宮崎駿がアニー賞脚本賞というのも妙な気がする。たとえばディズニー式の徹底的に人を入れてストーリーから何から練り上げるのと同じ釜に入れられるわけもないのだが。


アメリカ映画の製作コースでは、スクリプトとはコンティニュイティのこと、とも言うから、一緒にしたのかもしれない。