後半、「新しき世界」という意味がわかってくるあたりの凄みといい、ストーリーは満点に近い。
捜査官のイ・ジョンジェの無表情は迫力あるが、終盤の芝居にあちこち「ゴッドファーザー」のアル・パチーノが混ざるのが気になる。監督の責任だと思うが。
やたら弾けている兄貴分のファン・ジョンミンが金玉を掻くのは「仁義なき戦い 広島死闘編」の千葉真一ですか。
女優さん二人が似たタイプでどっちがどっちだかわからなくなるのは困ります。
潜入捜査官を操る刑事を演じるチェ・ミンシクが薄汚いもっさりしたおっさんと見せて、後半、寒気のするような要求を各人につきつけてくるあたり、演技巧者ぶりを見せる。
非常に惜しいのは、これでラストと思った直後に六年前のまだチンピラだった兄弟分の姿の回想が入るところ。入れるところを完全に間違えていて、余韻を殺している。
韓国映画のひとつの売りといっていいヴァイオレンス描写も、思い切って直接描写を見せるところと暗示にとどめるところの見極めがずれているところが散見する。
ヤクザたちが牛肉を食べるたびに「韓国産だぞ」と自慢する。中国産と比べて上等だぞという意味だろうか。日本から見ると韓国も中国も同じ「反日」国家と一緒くたにしてしまいがちだが、おそらく中韓同士の軋轢の方が複雑で強いのだろう。
民族問題を盛り込むのに犯罪組織ものは絶好の器なのだが、それをやらないし支持されるかどうか危なっかしいのが日本の弱いところ。映画だけの話ではない。
(☆☆☆★★)
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