1994年の製作だから「トレインスポッティング」(’96)や「フル・モンティ」(’97)より前の出演ということになる。
オープニングの父の葬儀のすぐ後で頭をくりくりに剃り上げてしまう、というあたりですでに異様なムードが漂う。プロレスラーのダイナマイト・キッドが初め貴公子風に長髪にしていたのがいきなりスキンヘッドにしてきたのを、小林邦昭が「あいつはキチガイだ、頭を剃り上げるというのはあちらでは囚人の印だろ」と評していたことがあったが、何か近い激しく破滅的な感覚がある。
カーライルは四歳の時に母親が家を出て行って父親に育てられたというが、イギリスの労働者階級出身で母親より父親との紐帯が強いというあたり、父親の形見の銃剣で連続殺人を犯す犯人と共通しているよう。
中盤で刑事を殺す場面、スーパーマーケットで刑事の夫人の胸を鷲づかみにして、かっとなって追ってきた刑事を密室に誘い込んで銃剣で刺すあたりの計算づくの犯行の冷徹さ、凄みはそうそう見られない。瀕死の刑事が路上に這い出た姿を画面の手前に置き、目撃した子供が奥に伸びる誰もいない住宅街に走っていく鮮烈な画面構成はドキュメンタリータッチのヒッチコックといった感じの傑作。あとで性的な意図はなかったとわざわざ断るあたり、なお怖い。
事件のバックに,ヒルズボロの悲劇という実際の大事故を持ってくるが、日本だったらそれらしい架空の事件にしそうな感じはする。
イギリス労働者階級の鬱積といったものがありありと出ている。ひとごとという感じはおよそしない。
しかし、こういうイギリス製ドラマの暗さというのは、癖になりますな。
Cracker - To be Somebody
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