予備知識がない当方とすると正直所謂ストーリーはまるっきりわけがわからないに等しいが、それがほとんどどうでもいい、というのは乱暴で、ストーリーやキャラクターは重要なのだがその提示と配置と動かし方、がもっぱら目に見える範囲に限りきっているという点で通常のストーリーテリングとは隔絶しきっている。
地下鉄の床いっぱいにぶちまけられてアリアドネの糸ばりに人を導く血糊の色のものすごさ、人物のアップの背景の必ずしも動かす必要のなさそうなエスカレーターを3DCGで横移動していたり、わずかな動きや色にもとことんこだわり抜いている感。
何より極端にほとんどそれ自体がアートと化したフォントワークがエヴァを思わせてさらに日本語そのもののデザイン的な面白さに感覚を広げる。
場内はグッズをいっぱいで、当方は如何にも縁なき衆生といった感じではあったけれど、面白く見た。こういうのがありうるのかと驚いた。
1月17日(日)のつぶやきでも引用した森川嘉一郎氏のツイートでも、実際にある建物や地下鉄の構内などがいったんそれらの通常の役割とはまったく違った目的の舞台として使われる。突飛な連想だが、鈴木清順の「陽炎座」で本来陽炎のたつ坂道を理科大のスロープ状の廊下の室内ロケで処理したりしたように。
次どうなるのかわからないが、線的なストーリー上の展開に期待しているというより、デザインされた世界がどう結晶が成長するように膨らんでいくのかといった期待に近い。
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映画『傷物語〈I 鉄血篇〉』 - シネマトゥデイ