それだけ恵まれていても生まれる前に亡くなって伝説となった父親に対するこだわり、というのを持ち続けているのが男社会アメリカらしい。大成功した父親に対して小成功している息子の独特のコンプレックスというか。
脚本がスタローンではないのも意外。もともとこの映画の企画の立ち上がりからすると不思議はなくて、原案・共同脚本・監督のライアン・クーグラーが主導権をとり、それでいてちゃんと「ロッキー」シリーズの細かい要素をはめこんでいて、ロードワーク中のアドニスを若者たちがウィリーして一斉に追う、というのは「2」の子供たちが群れをなしてロッキーを追いかけるという恥ずかしいシーンの再生なのだろうけれど、あれほどわざとらしくなくうまく嵌っていた。
韓国映画「クライング・フィスト」でもあったけれど、ボクシングシーンでえんえんとカットを割らずに打ち合う二人と一緒に踊るようなカメラワークが凄い。
同様に控室からリングに向かうのを後ろからずうっと追っていってリングに上がってぐうっと引くあたりのカメラワークは「レイジング・ブル」ばりと、「ロッキー」に限らずこれまでのボクシング映画のさまざまな要素を取り入れている。
相手選手がアイルランド系で、ボクシングの歴史でいうとアフリカ系よりイタリア系より前に世界チャンピオンを輩出していたのがアイルランド系。「ザ・コミットメンツ」でアイルランド人はヨーロッパの黒人だ、なんてセリフがあったけれど、ぐるっとまわって先祖帰りしたみたいなところがある。
しきりとビッグ・マウスをとばすのが最初の「ロッキー」でのアポロを思わせる。ああいうビック・マウスというのもファンを煽るためのプロの技のうちだろうし、もともとアドニス
と対戦を望んだのは話題性=客を呼べるからなのだろうが、お金の話は切り落としている。そこに話が行くと別の映画になってしまうせいもあるしアドニスがもともと割と裕福なのも効いている。
「ロッキー」1作目からのプロデューサーであるロバート・チャートフがこれを遺作として亡くなって、息子のウィリアム(初プロデュース作が「ロッキー・ザ・ファイナル」)が後を継ぐ格好になっているのにも注目したい。
(☆☆☆★★★)
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映画『クリード チャンプを継ぐ男』 - シネマトゥデイ