prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ベルイマン島にて」

2023年04月06日 | 映画
しかし、ベルイマンが今いたらどれくらいバッシングされていただろうと思う。
五人の女性の間に九人の子供がいて、他にも女性関係は数知れず、女優に手をつけるのは当たり前という男ですからね。
リヴ・ウルマンは同棲中のベルイマンのDVについて身の危険を感じてクローゼットに隠れたら思い切り蹴とばしてきたので扉が壊れ履いていたスリッパが飛び込んできたと自伝で具体的に書いている。ほとんど「シャイニング」です。これに対してベルイマンは自伝で「すべてリヴの書いてある通りである」とあっさり認めている。ずるいねえ。

佐藤忠男はベルイマンについて「たぶんずるくてスケベで魅力的な男だと思うんですよ」と発言しているが、同感。

リヴも同棲を解消した後も仕事は続け、ベルイマンが監督引退宣言を出した後は彼の脚本作の監督という関係にシフトする。

で、この映画でも今の目で見たベルイマンの行状の評価が当然入ってくる。
ベルイマンがロケ地として発見して住みつきそれからもたびたび撮影に使ったフォーレ島を訪れるイギリス人の監督夫婦がロケ地を聖地巡礼よろしく見てまわる。
ベルイマン・サファリというバスツアーがあるのに笑ってしまう。
実際、なるほどベルイマン映画で見たのと同じ場所なのだけれど撮り方が違うとこれだけ雰囲気が違うものかと思う。カラーで夏ということもあるだろう。
ベルイマンの家というのが出てくるが、本棚に本とLPがびっしり。

で、後半は創作に行き詰っていた妻が不倫気味になり、構想している映画が具体的なイメージ映像として現れてくる。その中で不倫が実際に描かれるあたり、ベルイマンの影響があるのかともしれないが、あまりよくわからない。

劇中のセリフでベルイマンは実生活でも作品でも残酷だとあるが、実際そうなのだけれど、見る方にとってはなぜか快感なのだな。
兵役についた時、永世中立国のスウェーデンの軍隊だというのに胃潰瘍になったというのをつかまえて非難する男というのも出てくる。
結構アンチもいたのだろう。日本にだって黒澤明のアンチはいくらでもいるのだし。