輪郭線を書かないで色の塗り分けだけで表現するのは、どこかで見た覚えがあると思ったら「ロング・ウェイ・ノース」や「カラミティ」などのレミ・シャイエ監督の技法だったなと思い当たる。同監督だけの技法とも、直接の影響どうこうとも言えないだろうが。
光の中でホコリが舞って煌めく表現がすばらしい透明感を出している。かと思うとスクラッチ=ノイズをわざと乗せたりしている。
モーションキャプチャーの使い方もこなれてきた。
絵を描くなり音楽を作るなり、動画を撮影・編集するなり、とにかく人が表現に携わるにあたっての悩みをテーマにしているのかと思うと、主人公の朝屋彼方自身はひたすら眠たがっているくらいであまり悩まず、音楽をやっていた教師・織重夕や絵の才能を評価されながらあきらめる同級生・外崎大輔の方が先走って悩んでいる。
自意識過剰な先生の方が無意識過剰な生徒に出会って再生する話としてまとめられるのではないか。夕と彼方がありがちな恋愛感情を持たないのは思い切りがいい。
ただ、ネット動画の再生回数の方を生で見に来た観客より軽く見ているような夕先生の態度はどんなものかと思う。
監督はぽぷりか、副監督はおはじき、アートディレクターはまごつき。なんですか、このふざけた名前は。
舞台は明らかに金沢ですね。