今どき写真を撮るとなったらまずスマホが出てくるところだろうが、これがほとんど出てこない。インスタグラムを使う場面でしぶしぶといった感じで出てくるが、宣伝になるという誘いにも乗らずあっさり引っ込む。
主人公の青年佐野晶哉はすでに写真の大きな賞を何度も取っていてメディアからも注目されているのだが、いともあっさり有名になるチャンスを投げ出して、平泉成の古びた写真館に押しかけ弟子入りする。
物好きな、と思うし、写真館で展示されている平泉が撮った女の子の肖像写真に惹かれたかららしいのだけれど、どこがそんなに特別なのか、写真一発でわからせるというのは相当に難しいというより、まずムリ。
一方でそれなりに注目されながら自分をいてもいなくてもいい存在と感じるという矛盾が、生煮えのまま投げ出されている。
青年は佐藤浩市が持っていた吉瀬美智子の小さな肖像写真を借りたと思ったら、もうパソコンに取り込んだデータをレタッチしている。スキャナーでスキャンしたのかスマホで撮影したのかわからない。
アルバムを被災で失ったお祖母ちゃん(美保純)が亡くなったのを看護人が家族でもない見ず知らずの佐野たちに教えるものかなと思った。ここは一応写真館に連絡をとってきた孫娘の口から言わせるところではないか。
細かいことだが、細かいことだからこそひっかかる。
市毛良枝が結婚式で花嫁姿になりたかったと今になって言うのだけれど、それをサプライズでかなえるというのもなんだか無神経。