prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「忍者武芸帖 百地三太夫」

2024年10月06日 | 映画
1980年の真田広之の初主演作で、当時20歳。日大在学中。
この時点で体技のレベルが違うのがわかる。演技表現の方はときどき稚さというか可愛らしさがのぞくのはアイドルとして売り出す事情もあるのだろう。

大海原を小舟で櫂を漕いで渡ってくるのが初登場シーンで(真田はタイトルバックの主題歌も歌っている)、それまで中国で身を隠していたという設定なのだが、おそらく少し前公開されたジャッキー・チェンの「酔拳」1978などを受けて中国服でカンフーアクション調を印象づけるという作戦がうかがえる。

本格的な(本当に本格的な)アクションスターにして、明るく爽やかなアイドルイメージも付与しているのだけれど、お話と展開の方は結構流血描写もあって残酷味が強い。
それにしても、当時の新人スターの売り出しにこれだけの物量を投入したのだから、「柳生一族の陰謀」とその余波の余裕がかなりあったのだろう。

音楽担当は(イギリスのとは違う)バスターという謎のバンドで、どうも軽くて安っぽい。

天守閣からのダイブというのが売りなのだが、惜しいかな追いつめられるまでのタメが弱いし、後始末もあっけない。

森の中で木の高さを生かしたアクロバットの手の数々はアクション監督・千葉真一のカラーが強く出ているように思える。
ここでは悪役にまわって映画の中でもストレートに師弟関係をうかがわせる。
この記事によると、「百地三太夫」自体、千葉の企画で、プロデューサーの日下部五郎を説得するのに真田をサーカスに預けたという。