マイケル・ムーアのことだから情報の選び方に相当にバイアスのかかってるのではないかなあ、という疑問はある。
カナダとフランスがアメリカに比べて国民皆保険制度がしっかりしているのは確かだろうが、財源が無尽蔵でありえない以上、何らかの問題がないとは思えない。
日本も国民皆保険制度は機能してはいるが、つい最近、老人保健の負担率が一割から三割に引き上げられたばかりで、まあ他人事ではない。ほぼ満員の場内は年配客が多かった(「不都合な真実」の時も多かったなあ)が、どう思って見ていたろう。
CBSドキュメントでもアメリカの医療保険制度問題について取り上げたのがあったが、あれでは上流はもちろん問題ないが、下流はあまりに貧しいので政府も保障をせざるを得ず、教育費や住宅ローンを抱えた中産階級が運を天に任せて保険に入らないでいたらその運に見放されて高額の医療費を抱えてどうしようもなくなる不当さを取り上げたものだった。
つまり中産階級というのが事実上滅びつつあるということはこの映画でもはっきり感じられる。
アメリカというのも「先進国」代表みたいな顔をしているが、れっきとしたキリスト教原理主義の発祥地でもあるわけで、実はものすごく「変」な国じゃないのか、という印象が最近、特にブッシュが「顔」になってから強くなってきた。
金額の数字にいちいち大体の日本円換算がルビにつく字幕というのは初めて見たが、いい工夫。ぱっと見てドルならともかくフランやポンド(ユーロではなかったぞ?)はわからないから。
「華氏911」はアメリカの次に日本で当たったというが、反米とまではいかなくてもアメリカ式独善的正義の押し付けに反感を持っている人は多いのは当然。
デンゼル・ワシントン主演「ジョン・Q」でもアメリカの医療保険の悪辣さは批判されていたが、あそこのラストでもちらっと皆保険制導入の旗手として出てきたヒラリー・クリントンが金をもらって転んだと知りげっそり。
社会主義国の労働礼賛のプロパガンダ映画の引用に笑う。グアンタナモ基地の捕虜の「待遇の良さ」を宣伝する場面はウソがミエミエだが、どうせなら北朝鮮式に捕虜に演技させたらどうだったか。
(☆☆☆★)
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