prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「戦狼/ウルフ・オブ・ウォー」

2018年01月18日 | 映画
中国版「ランボー」なんて紹介のされ方だったし、実際もうバカ強いのなんのって。
アクション映画としてのスケールと迫力も一歩も引かない、どころか踏み出している。製作費がうなっているような大量の武器を動員したアクションも肉弾戦もてんこ盛り。

ただし大きく違うのはランボーはベトナム戦争で心身ともに傷ついて国からは見捨てられたという意識を持っている一方で愛国心を持ち続けているというアンビバレンツを抱えているけれど、このヒーローは国との一体感に一片の疑いもない。

この映画自体、もちろんれっきとした愛国プロパガンダ映画であり、人民解放軍が国外の中国人を必ず守りますというアピールばりばり。このあたり日本の中途半端さとは良くも悪くも対照的。
一見して国連の承認の下に動いているようで、裏返すと承認が得られればミサイルも発射できるというわけ。

ラスボスは一見してこれといった政治的背景のない私利私欲にかられた反政府軍、ですらなくそれに雇われた西洋人の傭兵なのだが、アフリカにいる中国人を殺すのにバカに慎重でいる。なぜならクーデターが成功して権力を掌握できても、国として認められるには国連の常任理事国である中国の信任を得なくてはいけないから、という理屈がそこにくっつく。

敵役に政治色を直接付加するのは避ける一方で、国際社会で中国がどういう地位を占めるべきかという点で断固として政治的。見ている間はそう思わせないようにアクションで貫徹しているけれど、話が事実上終わった後でとってつけたようにお国自慢が出るとダレるし鼻白む。

現実ではアフリカの、たとえばスーダンに武器持ち込んで国を分裂させて資源を確保したのはどこの国だ、とか、労働力は中国から連れてきて現地の雇用など生んでいないではないか、と思うが、このあたり実にぬけぬけと話をさかさまにしている。このあたりのぬけぬけぶりもランボーばり。

タイトルで戦狼Ⅱなんて出るので、あれと思ったらこれはシリーズ二作目で何度も前編の回想シーンが頻繁に入ってくる、だけでなく完全にこれからもシリーズは続けるつもりなのがありあり。

アフリカで命を落とした外国人の中に韓国人と中国人はいても日本人がいないのに憮然とする。

ヒロインのCelina Jadeはどうもどこかで見た覚えがあるなと思ったら元小室ファミリーで、アメリカのテレビ「ARROW」でもレギュラーを務めていたという人。中米混血だけれど見た目は完全に白人寄り。
(☆☆☆★★)

戦狼/ウルフ・オブ・ウォー 公式ホームページ

戦狼/ウルフ・オブ・ウォー 映画.com



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1月17日(水)のつぶやき その2

2018年01月18日 | Weblog

1月17日(水)のつぶやき その1

2018年01月18日 | Weblog

「ビジランテ」

2018年01月17日 | 映画
政治と土地と開発利権の絡みあいといったモチーフそのものは昔だったらヤクザ映画で扱われた典型だが、それを土地の持ち主である三兄弟を通して描くことで政治劇であるよりは冒頭でいきなり描かれる暴君の政治家の父親という兄弟の性格の違いといい「カラマーゾフの兄弟」を思わせるどろどろした葛藤が描かれる。

長男の大森南朋がいったん一人だけ家出していたのが突然戻ってきたもので、長男であるにも関わらずよそもの感が強い。それが皮肉なことに住む場所も性格も父親と重なるところが大きいのが、現地の主そのものが他者というねじれを感じさせる。

女の子たちの扱いがまったく実質的に人身売買なのがすさまじく殺伐としていて、心胆を冷やす。

冒頭で子供たちがなぜ逃げているのか、また土に埋められたのは何なのか伏せておいて後でわからせていくことで埋められた物に一種の象徴性を与えている。

ビジランテ=自警団とはアメリカのものみたいな印象があったが、閉鎖的なコミュニティがよそものに対して警戒の棘を立てている姿、という点では日本でも同じように成立している感。

重厚なタッチは迫力あるけれど、終盤重すぎてややもたつくのは惜しい。
(☆☆☆★★)

「ビジランテ」 公式ホームページ

「ビジランテ」 - 映画.com



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1月16日(火)のつぶやき

2018年01月17日 | Weblog

「マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年」

2018年01月16日 | 映画
ブラニクの靴のデザイン自体の奇抜さ(というかデザインがああもたくさんあるということ自体が理解の範疇を超える)が壮観。
彼自身は自分はアーティストではなく靴職人だと語り、実際自分で手を動かし靴を作っていく。家族はおらず、人と一緒に生活するなど考えられないと言い切る。
最も好きなアーティストはセシル・ビートンだそう。

靴のデザインが注目されること自体、最近のこと、ダイアナ妃が履いて衆目の集まる場に出てきたり、テレビの「セックス・アンド・ザ・シティ」以降らしい。

ずらっと並ぶセレブたちが美しいというより何やらダンテの「神曲」の地獄めぐりめいて見えたりする。
ルパート・エヴェレットが出てきて縞柄のパンプスを買って気に入っているけれど履いていないという。靴を履かずに置いておくとは、イメルダ・マルコスに限らないらしい。

「マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年」 公式ホームページ

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1月15日(月)のつぶやき

2018年01月16日 | Weblog

「勝手にふるえてろ」

2018年01月15日 | 映画
前半の映像テクニックは斬新というよりいかにも才気を見せる若い監督らしいが、なんともいえないヒロインの挨拶に困る感じに密着しているのがキャラクターが手に入っている感じ。

ルックスが良くてもずうっ面倒な感じが離れない、それでいて可笑しいバランス。

「勝手にふるえてろ」 公式ホームページ

「勝手にふるえてろ」 - 映画.com



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1月14日(日)のつぶやき

2018年01月15日 | Weblog

1月13日(土)のつぶやき その2

2018年01月14日 | Weblog

1月13日(土)のつぶやき その1

2018年01月14日 | Weblog

「否定と肯定」

2018年01月13日 | 映画
原題はDenial=否定だけで、肯定と並べるのは両論併記的であたかもアウシュビッツはなかった論にも根拠があるかのように見えるという批判をかなり見たし、実際そうだと思う。

もう一つ、セリフの中でself denial=自己否定という表現が出てくる。リップシュタット教授が直接裁判で発言するのを弁護士チームが決めた法廷戦術で禁じられるのに絡めてのことだし、教授だけでなく収容所の生き残りの発言も禁じるのともつながってくる。
挑発に乗らないこと、当たり前のことが通らないことに苛立ちすぎないことも重要で、相手の低みに合わせてはいけないということだう。

どちらが正しいかを決める裁判ではない。天動説と地動説のように明白にどれが正しいか立証されている問題を問い直すというムダな行為を排除するというのは、一つには英米法自体が法のルール内で勝敗を競うゲーム的要素が強く真偽を問うたり真相究明を目指す傾向が強い上から成立するようなとこがある。ど

トム・ウィルキンソンの弁護士がぷかぷかタバコをふかし酒を飲みながら仕事するのにちょっとびっくり。ちょっと「情婦」のチャールズ・ロートンのような味がある。
レイチェル・ワイズが知的であると共にあまり大きく表情を動かさない中で内心怒りで腸が煮えくり返っているのをまざまざと感じさせ、ティモシー・スポールが平板な人物の平板さ正確に表現している。
(☆☆☆★★★)

基本的に歴史改竄主義者の手口は世界的に驚くほど似ている。
1 不適切でしばしば歪曲を伴う史料の引用
2 自分たちがやっていることを仮想敵の学者やメディアに投影してしきりと捏造や歪曲だと先回りして非難する
3 メディアに乗るようあえて非常識でセンセーショナルな発言をして注目を集め、注目度の高さ賛同者の数があたかも正しさの後ろ盾になっているかのように見せかける
4 何度まともな議論で否定されても知らぬ顔で同じことを繰り返し論破されていないように見せかける、
5 枝葉末節の情報の真偽を問い、すぐには(当然)答えられないのを知識があやふやで根拠に乏しいようにすり替える
など。

「否定と肯定」 公式ホームページ

「否定と肯定」 - 映画.com



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1月12日(金)のつぶやき

2018年01月13日 | Weblog

1月11日(木)のつぶやき

2018年01月12日 | Weblog

「永遠の眠りと復活」

2018年01月10日 | 小説
―ここはどこだ? 
 何も見えない。何も聞こえない。いや、何か音がする。人の声か。俺は何をしていたんだ?
 何か節々が痛むな。そうだ。俺は病気だったんだ。感染症だった。何という名前のウィルスだったか、ややこしくて覚えていない。
 それで余命一週間と宣告されて。
 なんてことだ、余命一週間だと。
 いや、それで決めたんだ。俺には、幸い金があった。事業で忙しく世界中とびまわって、それでどこかで感染したんだが、とにかく仕事は順調で金はあった。
 それで決めたんだ。いったん、冷凍睡眠(コールド・スリープ)しておいて未来でこの病気を治す方法が見つかるのを待とうと。
 決めたら早かった。俺は決断は早いんだ。だから商売でも成功した。
 そうか。治療法が見つかったんだ。それで冷凍睡眠中の俺を覚醒させた。どれくらい眠っていたのだろう。知っている人間たちは生きているだろうか。
 しかしみんな死んでいたとしても、どうってことはない。俺はいつだって自分の力で自分の運を切り拓いてきた。生き返ったら、またやってやるぞ。
 何かチクッとしたな。そうか、特効薬を注射してくれたのか。

―そんなに貴重なんですか、そのウィルスが。
―そうとも。正確に言うと、ウィルスの原種がな。今流行っている何度となく変異してきた型に対抗するに、原種から遡ってDNAの型を見ていく必要があるんだ。
―この患者の体内にウィルスが患者と一緒に冷凍保存されている。
―そういうことだ。
―患者は助かるのかな。
―難しいな。とうに手遅れだ。
―未来になったら、助かると期待をつないだらしいけれど。
―ムリなものはムリだよ。
―ウィルスは生き続けて、ヒトは死ぬ、か。
―代わりに大勢の命が助かる。
―血液は採取したな。
―はい。
―あとは厳重に隔離しろ。

―おかしいな。だんだん痛みがひどくなってきた。そうだ、意識がなくなる前、頭痛に、吐き気に、関節の痛みに、そうだ、全身の毛細血管がボロボロになって目からも出血していたんだ。
 痛、いたたたた。
 おい、いつ治してくれるんだ。何を注射したんだ。
 動けない。
 見えない。いやかろうじて見える。視界が真っ赤だ。目玉から出血している。網膜の毛細血管が破け続けているのか。
 金なら出す。いくらでも出す。
 助けてくれえっ。