prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「エスター ファースト・キル」

2023年04月08日 | 映画
「エスター」一作目は「猿の惑星」 や「サイコ」みたいに 意外性が 肝になってる 映画の一つなのだが、 この二作目はネタがバレた後の製作となるので当然 作り方 が大きく変わってくる。

1作目の心理的、暗示的な怖さではなく冒頭から直接的な暴力描写で攻めてくる。エスターの正体に気がついた敵役を設定して、それとの戦いに持って行ったのも作戦。
見ている側とすると、むしろエスターに 肩入れすることになる。ホラーもののキャラクターはジェイソンにせよレザーフェイスにせよ、おなじみさんになると、半ばヒーロー化するのですね。

主演のイザベル・ファーマンが一作目から14年という時間が経ったので見かけが変わったのも取り込んでる感じ。
「ブリキの太鼓」の続編(主人公のオスカルがまた成長を始めてからの原作の後半)を同じダーヴィド・べネント主演で作るという企画があったのを思い出した。
実際の身長は163cmとさほど小さくないが、今のデジタル技術だと年齢を若くしたり背丈を変えられたりしますからね。

エストニアにある監視モニターがサムスン製。2007年の設定だから当然ではあるけれど、これが70年代80年代だったら日本製だろう。

エンドタイトルにインティマシー・コーディネーターがクレジットされているが、性的なシーンってあったっけ。寝てたのか?





「映画ネメシス 黄金螺旋の謎」

2023年04月07日 | 映画
ゲノム編集とか黄金率とか仮想通貨=暗号資産とか新しい理数系っぽいアイテムを色々取り入れているのだけれど、正直センスの上でも画の上でも滑りっぱなし。もともと画にしにくいモチーフばかりではないかという点を差し引いても、ちょっと。

夢を操る機械なるもの(この造形デザインがどうも)が出てきて、それで操られた夢がたびたび出てくるのだけれど、もともと現実と間違えるようにできているとはいえ、なんべんも繰り返されるとくどいし、だんだんストーリーがぼやけてくる。

アクションシーンのスタントやCGなどの見せ場がいちいちショボいのはあまり言いたくないのだけれど言わないわけにはいかない。

富裕層の陰謀やゲノム編集による人間の選別化っていうのもウソではないのだが、言葉にするとウソっぽくなる。その具体を見せてもらわないと。




「ベルイマン島にて」

2023年04月06日 | 映画
しかし、ベルイマンが今いたらどれくらいバッシングされていただろうと思う。
五人の女性の間に九人の子供がいて、他にも女性関係は数知れず、女優に手をつけるのは当たり前という男ですからね。
リヴ・ウルマンは同棲中のベルイマンのDVについて身の危険を感じてクローゼットに隠れたら思い切り蹴とばしてきたので扉が壊れ履いていたスリッパが飛び込んできたと自伝で具体的に書いている。ほとんど「シャイニング」です。これに対してベルイマンは自伝で「すべてリヴの書いてある通りである」とあっさり認めている。ずるいねえ。

佐藤忠男はベルイマンについて「たぶんずるくてスケベで魅力的な男だと思うんですよ」と発言しているが、同感。

リヴも同棲を解消した後も仕事は続け、ベルイマンが監督引退宣言を出した後は彼の脚本作の監督という関係にシフトする。

で、この映画でも今の目で見たベルイマンの行状の評価が当然入ってくる。
ベルイマンがロケ地として発見して住みつきそれからもたびたび撮影に使ったフォーレ島を訪れるイギリス人の監督夫婦がロケ地を聖地巡礼よろしく見てまわる。
ベルイマン・サファリというバスツアーがあるのに笑ってしまう。
実際、なるほどベルイマン映画で見たのと同じ場所なのだけれど撮り方が違うとこれだけ雰囲気が違うものかと思う。カラーで夏ということもあるだろう。
ベルイマンの家というのが出てくるが、本棚に本とLPがびっしり。

で、後半は創作に行き詰っていた妻が不倫気味になり、構想している映画が具体的なイメージ映像として現れてくる。その中で不倫が実際に描かれるあたり、ベルイマンの影響があるのかともしれないが、あまりよくわからない。

劇中のセリフでベルイマンは実生活でも作品でも残酷だとあるが、実際そうなのだけれど、見る方にとってはなぜか快感なのだな。
兵役についた時、永世中立国のスウェーデンの軍隊だというのに胃潰瘍になったというのをつかまえて非難する男というのも出てくる。
結構アンチもいたのだろう。日本にだって黒澤明のアンチはいくらでもいるのだし。





「シャザム! 神々の怒り」

2023年04月05日 | 映画
心は子供、身体は立派すぎるくらいの大人というキャラクターたちだから、時間が経つと演者もキャラクター内部でも成長してしまう、ユニバースに組み込むにはあまり使い勝手がよくないヒーローなわけで、ラストの展開は今後にどうつながるのだろうと半ば首をひねった。

木がニューヨークの街で猛烈な勢いで成長してビルを破壊してまわるあたり、マンモスフラワーをパワーアップしたみたい。
CGで木でできたドラゴンの軽さが表現できている。





「ロストケア」

2023年04月04日 | 映画
松山ケンイチと長澤まさみが対峙するシーンは黒澤明の「天国と地獄」が原点として浮かび上がる。特に鏡=ガラスの使い方。
中盤までは あくまで 取り調べられる者と調べる者という関係で、さらには社会の落とし穴にはまった下級国民と上級国民といった互いに相容れない存在として描かれていて(つまり「天国と地獄」)、鏡に映るのももっぱらそれぞれの複数の鏡像が一つの画面に収まってるように撮っている。いわば、それぞれ自分しかいない世界に閉じこもっている図だ。

それが終盤の面会室のシーンでは間を仕切る ガラスに 互いの顔がダブって見える。それまでの展開で、実は二人には親との切りたくても切れない関係がある点で(それはほとんどの人間がそうだろう)だぶるのがわかってきたのと重なる。物理的な仕切りができることで却って二人が重なってることが示されるアイロニー。

前半 カメラがゆっくり動いてるカットが多く、対立が激しくなるとカットの重ね方の切れ味も良くなってくる計算された演出で、主演ふたりのやりとりの緊迫感を高めた。

 中盤までの 松山ケンイチのキャラクターは「ブラック・ジャック」のドクター・キリコを思わせる 怪物的でようで 説得力のあるキャラクター だが、中盤から怪物ではない人間であることが次第に明らかになっていく。
その分良くも悪くも常識化するわけで、やや場面とすると弛緩する。

介護の辛さについての描写が出てくるのだが 介護というのは単に休みがない、親が壊れていくのを見るのがつらい、何の報酬も出ない(この国では介護に限らず家族の労働は無料で当たり前という考えの上に成り立っている) というだけではなく、 本質的な解決が死によってしかありえず、しかも頑張れば頑張るほどその解決の到来を 引き伸ばしてしまう構造にあるわけで、映画の切り取られた時間の中で描くことには本質的な矛盾がある。

語りの中に一種のミスディレクションが さりげなく入っているのだが こういう技法を 前田哲監督は好むらしい。 「そして バトンは渡された」でも使っていたし、自分が「学校の怪談G」の「食鬼」の脚本を書く時にもそういうひっかけを作ってくれと要求された。

マタイ伝の第七章の引用から「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにしなさい 」というのが冒頭に掲げられ重要なモチーフになっているのだが、メインタイトルの「ロスト」のトの字や、松山の部屋の窓の影が十字架のように見える。





「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」

2023年04月03日 | 映画
ボウイがアーティストであると共に、 当人そのものがアートなのを端的に見せる。
ファンたちに何が好きかと聞いたら「メイク」と答えたのがいたのになるほどと思う。

それにしても「メトロポリス」「2001年宇宙の旅」「月世界旅行」やずいぶんいろんな直接ボウイとは関係のない、しかしインスパイアされたであろう映画がばんばん引用される。息子のダンカン・ジョーンズが映画監督になったのもむべなるかな。

「地球に落ちてきた男」で引用されていた実際のロケットの大気圏突入の映像が再び出てきたのには不思議な気分になった。もちろん「戦場のメリークリスマス」もちょろっと引用されている。画質がいいので目立つ。





「シング・フォー・ミー、ライル」

2023年04月02日 | 映画
歌うワニっていうのがまず荒唐無稽で、それを見世物として売り出そうとするハピエル・バルデムのキャラクターはよく考えてみると「エレファント・マン」の見世物小屋の主に近い悪役に なりそうなキャラクター。 

「グレーテスト・ショーマン」のスタッフというのが宣伝上の売りなのだが、具体的に言うと同作の作詞作曲のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが同様に劇中曲の作詞作曲と製作総指揮とを担当しているわけで、このコンビには他に「ディア・エヴァン・ハンセン」がある。
並べてみると、異形のものとの共存するにあたっての壁といったテーマが割と一貫しているかと思える。
ライルが 極端に 内気でしゃべることができないのだが 歌うことはできるっていう設定がその壁とその突破口を典型的に示す。

だからというか、その間に立つ商売人=ショーマンが悪役よりはあまりあてにならない媒介者になるわけか。

ライルのビニール人形みたいな質感が爬虫類のぬめっとした感触を出しながら生理的不快感は排除している。
本物の(という設定の)ワニと一緒に出てくる場面で質感の違いは歴然。

時間の都合で吹き替え版を見たのだが、歌が日本語版と字幕版が混ざっているのはどういうわけだろう。
歌そのものの曲数はやや少ない印象。クライマックスまで持っていく手順が良くも悪くもいかにも定石通り。

ゴミとして捨てられていた食べ物を漁ったり、ライルを救出するためとはいえ罪のない警備員が相当ひどい目にあっているところとか、いくつか「いいのか?」と思わせる場面はある。





2023年3月に読んだ本

2023年04月01日 | 
読んだ本の数:23
読んだページ数:4419
ナイス数:0

読了日:03月05日 著者:高山 真




読了日:03月05日 著者:のりつけ 雅春



読了日:03月08日 著者:のりつけ 雅春



読了日:03月13日 著者:稲田 豊史



読了日:03月14日 著者:豊田有恒




読了日:03月14日 著者:久部 緑郎




読了日:03月14日 著者:久部 緑郎,河合 単




読了日:03月14日 著者:久部 緑郎,河合 単




読了日:03月14日 著者:久部 緑郎,河合 単




読了日:03月15日 著者:石塚 真一




読了日:03月15日 著者:石塚 真一




読了日:03月15日 著者:石塚真一




読了日:03月15日 著者:石塚真一




読了日:03月17日 著者:山本 崇一朗



読了日:03月17日 著者:山本 崇一朗



読了日:03月17日 著者:山本 崇一朗



読了日:03月17日 著者:山本 崇一朗



読了日:03月18日 著者:城所岩生



読了日:03月21日 著者:和田 誠




読了日:03月26日 著者:忍澤勉




読了日:03月26日 著者:さいとう・たかを

読了日:03月27日 著者:ヤマザキ マリ



読了日:03月31日 著者:筒井 康隆,蓮實 重彦