prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

2024年10月16日 | 映画
アメリカくらい「外で」戦争やっていた国もないのだが、そのコンパスの脚をくるりと回して自分で痛みと恐怖を知るという思考実験の感がある。
「地獄の黙示録」みたいな地獄めぐりを自国でやっているようなもの。

リチャード・アッテンボローが大戦中に銃を撃つのではなくカメラでシュートしていたと言っていたけれど、銃を撃つのとカメラで撮るのとは英語では同じshootになる。
カメラで撮るのを許すのは外に見せる効果というのを頭に置いているからで、ここで武装している者たちがもし隠そうとしたら、あるいは隠そうともしなくなったのがジェシー・プレモンスの出番ということになる。

クライマックスのホワイトハウスで大統領自身が銃をとって戦う?シーンなどチリのサルバドル・アジェンデ大統領がアメリカが背後についた軍のクーデターで戦死したパロディみたい。

フィルムを簡易キットで現像するシーンなどデジタルカメラないのかと思ったら後できちんと出てくるのはどういう意味だろう。
音響効果がすさまじい。

主人公たちの車が走ってきて、はるか後ろに別の車が現れるあたり、さらに追い抜いて行ってなぜか空になって止まっているあたりの恐怖。






「ビートルジュース ビートルジュース」

2024年10月10日 | 映画
リメイクには違いないのだが、メインスタッフキャストがほぼ一緒で、しかし技術的な進歩はむしろ目立たないようにしているという、かなり異例のリメイク。
変わったところといったら、みんな年取ったというところかなあ。





「憐れみの3章」

2024年10月08日 | 映画
三話のオムニバス形式なのだが、キャストがほぼ完全にだぶってそれぞれ別の役をやっており、役者たちの芸達者ぶりを見せるとともに役の交換可能性とでもいうべきことを示していたのではないかと思える。
というのも、ランティモスはマット・ディロンが地下鉄で時間をきいただけの女性と役割を文字通り交代させるという妙な内容の短編「NIMIC/ニミック 」を撮ったことがあるからで、「ロブスター」にせよ「聖なる鹿殺し」にせよ、人間の個性とか人間たらしめているものとかを無視して動物扱いしているように思える。

細かいところだけれど水のないプールに走って飛び込んで死ぬのをワンカットで撮っているのはどんなトリックなのだろう。底だけ柔らかい素材にするにしてもかなり高さあるし。





「吼えろ鉄拳」

2024年10月07日 | 映画
出だしでいきなり香港で真田広之が殺されるので、あれれと思ったらすぐ西部劇調の設定で双子の弟の役で再登場する。製作は後だが、「男たちの挽歌2」とか、ぬけぬけとご都合主義を通すあたり昔の香港映画みたいだなと思った

真田の主演第一作「百地三太夫」も、それに続くこの主演第二作でも海外から日本に帰ってくる役をやっているのは今になってみると予感的。当時からあらゆる分野にまたがる身体訓練を積んでいて世界に通用する準備はすでに積んでいたのだろう。

アブドーラ・ザ・ブッチャーがかなりの見せ場が割かれているあたり、比べるのも変だが「デビルマン」のボブ・サップのムダ遣いと同じ東映の劇場で公開されたのだろうなと想像すると妙な気分になる。

後半、身体を張ったアクションまたアクションの連打と、それに挟まるいかにも鈴木則文調のかなりシモがかった笑いのサービス精神はうれしい。
こういうの、今ないよなあ。




「忍者武芸帖 百地三太夫」

2024年10月06日 | 映画
1980年の真田広之の初主演作で、当時20歳。日大在学中。
この時点で体技のレベルが違うのがわかる。演技表現の方はときどき稚さというか可愛らしさがのぞくのはアイドルとして売り出す事情もあるのだろう。

大海原を小舟で櫂を漕いで渡ってくるのが初登場シーンで(真田はタイトルバックの主題歌も歌っている)、それまで中国で身を隠していたという設定なのだが、おそらく少し前公開されたジャッキー・チェンの「酔拳」1978などを受けて中国服でカンフーアクション調を印象づけるという作戦がうかがえる。

本格的な(本当に本格的な)アクションスターにして、明るく爽やかなアイドルイメージも付与しているのだけれど、お話と展開の方は結構流血描写もあって残酷味が強い。
それにしても、当時の新人スターの売り出しにこれだけの物量を投入したのだから、「柳生一族の陰謀」とその余波の余裕がかなりあったのだろう。

音楽担当は(イギリスのとは違う)バスターという謎のバンドで、どうも軽くて安っぽい。

天守閣からのダイブというのが売りなのだが、惜しいかな追いつめられるまでのタメが弱いし、後始末もあっけない。

森の中で木の高さを生かしたアクロバットの手の数々はアクション監督・千葉真一のカラーが強く出ているように思える。
ここでは悪役にまわって映画の中でもストレートに師弟関係をうかがわせる。
この記事によると、「百地三太夫」自体、千葉の企画で、プロデューサーの日下部五郎を説得するのに真田をサーカスに預けたという。




「犯罪都市 PUNISHMENT」

2024年10月05日 | 映画
フィリピンに韓国から連れていった若いIT技術者を監禁しリモートでカジノをさせるのだが、これを日本にあてはめると若者を外国に置いて金のある高齢者に電話をかけさせるということになるだろう。
実際に韓国であった犯罪の手口を取り入れたそうだが、日本の特殊詐欺みたいなのは韓国にはないのだろうか。息子のふりをして母親に金を出させるというのは母子の縁が濃いだろう韓国にはありそうだが。

マ・ドンソクのぶっとい腕から繰り出されるパンチに悪者たちが消し飛ぶのが愉快痛快。ドンソクがずんぐりした体型で、周囲の刑事より背が低いのが逆にバランスがとれている。

ドンソク扮するマ・ソクト刑事は飛行機のファーストクラスまで犯人を追っていくのだが、もとより敵が二人だから有利なのをナイフを空港のボディチェックで取り上げられているのを調理場で手に入れるという段取りにして、あたまから一方的な力関係にしないよう工夫している。

マ・ソクトはおよそデジタルという柄ではないが脇に女性刑事でデジタルに強いキャラクターを置いて、それも彩りという扱いではないのがこれまた行き届いたところ。





「あの人が消えた」

2024年10月04日 | 映画
ホラー調で始まり、一転して宅配便の配達員の仕事の描写に移るのだが、配達の仕事ぶりにしても先輩との日常的な会話にしても、なんだか細かいところにリアリティがないな、あんなに配達員が荷物を取りに出た家の事情に首を突っ込んで会話をかわすものかなと思っていたら、たちまちリアリティが乏しいなんて段階はすっとばして、こんにゃく問答にはなるわ、画面に写っていたものがなかったことにはなるわで、いささか当惑した。

終盤の展開はどんでん返し自体が自己目的化しているというか、よって立つ前提が逃げ水みたいに逃げていくみたいで、ライトノベルというのは全然読まないのだが、転生ものとか勇者ものというのが受けているのはリセットというかチャラにできる設定や展開に需要があるからなのかな。

染谷将太・菊地凛子夫妻が両方とも出てるので、これも何かのトリックかと思った。





「Cloud クラウド」

2024年10月03日 | 映画
米アカデミー賞の日本代表になったわけだが、この映画の後半をほぼ丸々占める銃撃戦は銃の本場アメリカから見るとどう映るだろう。
もちろんいくらアメリカが銃で作られた国だからといって、アメリカ映画の銃撃戦が“リアル”なわけがなく大いに誇張してあるわけだが、ここに集まってくるのは明らかにプロの犯罪者ではなく、素人に毛が生えた程度の、「映画で」銃を扱うのを見たことがあるレベルの連中に過ぎない。
当然、物量で押すわけにはいかず、銃も弾丸もかろうじて寄せ集めている感じ。
グリップに星が捺されていたのは、トカレフか。いかにも中古品です。

撃たれた人間が弾着で血が出るのは抑え気味にして、黒沢清作品ではおなじみの、パン、と撃たれて、操り人形の糸が切れたみたいにぐしゃっと崩れて死ぬのをもう少し押して何発も撃ってとどめを刺すのはこれまでに押しを加えたということだろう。

ライフルで撃たれたコンクリートの盾がぼろぼろと崩れるのは目立たないが見たことがない。

荒川良々が再登場するときにしばらく頭の後ろしか映らないのだが、誰だかすぐわかる。髪型に特徴があるとか物語上にそろそろ出てくると予感させるという以上に、直観的にわかる。

前半の荒れた家屋の窓の外がすでに「CURE キュア」を思わせる妙な色と光のトーンを出している。





2023年9月に読んだ本

2024年10月01日 | 
読んだ本の数:23
読んだページ数:5417
ナイス数:5

読了日:09月01日 著者:バージニア ウルフ




読了日:09月02日 著者:沖田×華




読了日:09月02日 著者:沖田×華




読了日:09月02日 著者:沖田×華




読了日:09月03日 著者:鮫肌 文殊




読了日:09月04日 著者:久坂部 羊




読了日:09月04日 著者:秋本治




読了日:09月05日 著者:安彦 良和




読了日:09月05日 著者:安彦 良和




読了日:09月07日 著者:水木 しげる




読了日:09月10日 著者:ティム・オブライエン




読了日:09月10日 著者:小梅 けいと




読了日:09月13日 著者:溝上憲文



読了日:09月15日 著者:細田 昌志




読了日:09月17日 著者:池上 彰,佐藤 優




読了日:09月19日 著者:小宮山 功一朗,小泉 悠




読了日:09月20日 著者:さいとう・たかをプロ

読了日:09月21日 著者:中島らも




読了日:09月23日 著者:水木しげる




読了日:09月23日 著者:伊藤 理佐




読了日:09月25日 著者:伊藤理佐




読了日:09月26日 著者:フォークナー




読了日:09月29日 著者:前野ウルド浩太郎