2年前に、奈良県・飛火野で撮った写真で
「大和の鹿・サクの物語」を書きました。
今秋、2年ぶりに、若草山に行き
「大和の鹿・サクの物語2022」を書きました。(続編)
2年前の物語は、こちらです。
「大和の鹿・サクの物語」2020年版
2020年版も、お時間がある時
併せてお読みくださると、嬉しいです。
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「大和の鹿・サクの物語2022」
大和の森に、サクという老鹿が住んでいました。
サクは人間と話ができ、未来を予測する力を
神さまから、与えられていました。
2年前
生きることに疲れた旅人が、サクと話をし
自信を取り戻し、元気に帰って行きました。
それからその旅人は、大和の村で成功を収め
村人から、尊敬される人になりました。
旅人だった彼は、大和の国に根を下ろし
立派な男に、なっていました。
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ある日
男は、サクに会って
あの時のお礼を言いたいと思い
2年ぶりに、大和の森を訪れました。
けれどサクの姿は、どこにもいない。
男は、何日も何日も、探しましたが会えません。
男は、サクが姿を消したことを知りました。
村の長老は
「サクは、天に還った」と、言いました。
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大和の森では
サクの子供たちが、元気に暮らしていました。
幾つもの鹿の家族が、仲良く暮らしていました。
村の長老は、サクに会う方法を教えてくれました。
一念不動、一意専心に、サクに会いたいと願え。
そして風がピタリと止まった、秋の夕暮れ
太陽が西の空に沈む頃、サクが光の道を駆けてくる。
その時、一瞬だけ、サクに会うことができると。
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男は、サクに会いたい一心で、山頂に登りました。
小春日和の秋の日、陽は西に傾き始めました。
もしかしたら、今日のような穏やかな日に
サクに、会えるかもしれない。
それは、男の直感でした。
山頂には、サクの子供らしい鹿がいました。
「君は、サクの子供かい?」
「サク、サク、サク・・・」と、呼ぶと
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どこからともなく、鹿が集まって来ました。
山頂には、かつてサクが統率していた鹿が
たくさん住んでいます。
大和の森の鹿たちは、人間が大好きでした。
それはサクの教えでした。
サクは大和の森で、人間と鹿が
「共存」しながら、生きてゆくことを唱えたのです。
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「サク、サク、サク・・・」
男がサクの名前を呼ぶと、また鹿が集まって来ました。
どこからか、「ピィー、ピィー、ピィー」という
鹿の鳴き声が、聴こえて来ます。
縄張りを持つ雄(オス)鹿が、鳴く声です。
男はその鳴き声が、サクに思えてならない。
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「秋の日は つるべ落とし」
陽は、どんどん落ちてゆく。
「サク、サク、サク・・・」
「サク、サク、サク・・・」
「会いに来たよ」
「光の道から、駆けて来い」
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風は、微風。
風は、止(や)まない。
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あんなにたくさんいた鹿が
一頭、又一頭と、ねぐらに帰ってゆく。
母子の鹿がいます。
何かを待っているような。
父親は、サクだろうか。
風が止(や)んだら、風が止(や)んだら
サクは、ここに来る。
この母子に、会いに。
旅人だった男に、会いに。
まもなく陽は、沈む。
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一瞬、風が止(や)んだと思って、振り返る。
母子の鹿も、振り返る。
その時
男は何かが、通り過ぎるのを
見たような 気がした。
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「ねえ、あれは、サクだったよね」
「君たちも、サクを見たよね」
遠くから「ピィー、ピィー、ピィー」という
鳴き声が聴こえる。
それはもの悲しくも、聴こえるけれど
自己主張しているようにも、聴こえる。
そして落日。
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「サク、あの時はありがとう」
「私はもう大丈夫、しっかり生きてゆくから」
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「さあ、おいで。 サクの子供たちよ」
「撫でさせて、おくれ」
「ありがとう、サクにお礼が言えたよ」
「これから真っ直ぐ、進んでゆける」
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静寂(しじま)の中で
次第に茜色が蒼色に、呑み込まれてゆく。
「ピィー、ピィー、ピィー」という鳴き声は
更に、遠ざかってゆく。
あの時、サクは地上にいた。
男は今
サクが、天に還ってゆくのを感じていた。
「大和の鹿・サクの物語2022」
若草山撮影2022年11月吉日 マドンナ