29日から始まったシャガール展に行って来ました。
絵心のない私ですが、絵画の鑑賞は好きです。
それに「シャガールの世界」は昔から大好きでした。
シャガールは1887年に白ロシア(現ベラルーシ)で
ユダヤ人の一家に生まれました。
20世紀の初めのパリでその才能を開花させ
パリの代表的な画家として活躍しました。
空を飛ぶ恋人たち、楽器を奏でる動物
花束を持った天使、イーゼルに向かう画家・・・・・。
シャガールの作品は
繰り返し描かれるモチーフがいくつかあります。
これらは組み合わされたり、変容させられたりしながら
ひとつのテーマを完成させ
さまざまな作品に何度も描かれています。
シャガールの混沌とした世界は独特で
その計り知れない創造力は、今なお彼の魅力として賞賛されています。
この展覧会では
作品をモチーフによって5つのテーマで構成されていました。
「生と死」 根幹的テーマ
「聖なる世界」 親密な存在
「サーカス」 空想に遊ぶ空間
「愛の歓び」 描き続けた最愛の人
「自画像」 多彩な演出とともに
この左のパンフレットの作品は
「エッフェル塔と新婚の二人」という作品です。
2度目のパリ時代に描かれた
「愛の歓び」あふれるこの作品にも
シャガールが繰り返し用いたモチーフが存在します。
「恋人たち」に祝福の「花束」を差し出す「天使」
恋人たちはシャガールと最愛の妻べラ。
天使は娘イダがモデルだといわれている作品です。
遠くに見える「パリ」を代表するエッフェル塔の中には
故郷・ヴィテブスクの街並みが描かれています。
古今の画家たちの中で
シャガールほど恋人たちをたくさん描いた画家はいないでしょう。
画面の中央に大きく恋人たちが描かれていて
名実ともに恋人たちの作品が中心となっています。
さらに恋人同士が描かれているだけではなく
動物たちや天使が寄り添い、花束や音楽による祝福が行われています。
シャガールの作品はモチーフを総動員して
「愛」への賛歌が表現されています。
そしてこれらの恋人たちの多くが
シャガール自身と最初の妻べラをモデルにされたといわれています。
また2番目の妻ヴァヴァや7年間生活を共にしたハガードもあり
これは誰だとはっきりと断定できないけれど
多かれ少なかれ
シャガールの経験や感情が絵画のなかに描かれています。
また絵画の一部に恋人たちを描いている作品も多く
この時の恋人たちは動物や花束のモチーフと同じ位置であり
作品全体を強調する役割を果たしているようです。
いずれにしてもシャガールにとっての恋人たちは
「愛の歓び」そのものであり、幸福感や祝祭感を表現する
最大のモチーフだといえるのではないでしょうか?
ユダヤ人として生まれ、幼年時代はユダヤ教の
さまざまな行事や儀式と共に過ごしています。
初期の作品には「誕生や死」という
日々の生活を生々しく描いた作品も少なくありません。
>少年の時から私は聖書に魅了されてきた。
>聖書はいつの時代も詩の最も大きな根源であるとずっと思ってきたし
>今もそう思っている。
>その時以来、私は人生や芸術における聖書の反映を探した。
>聖書は自然の共振のようなものであり
>私はこの秘密を伝えようと努めた。
シャガールの「聖なる世界」はこのように
極めて自然な形で芸術の世界に浸透していったのでしょう。
ヴォラールから「聖書」の挿絵を依頼されることによって
本格的に取り組むことになり
晩年には教会のステンドグラスを次々と制作するなど
宗教画は生涯を通してシャガールの重要なテーマとなったようです。
>誕生から死に至るまでの人の一生全部流れてゆくように
>一枚の絵を描くことができるというのが
>私のように年老いた者のせめてもの特権なのだ
97歳で亡くなるまでシャガールは衰えることなく
数多くの素晴らしい作品を残した巨匠でもあります。