豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

“フロスト警部 泥棒の忘れ物”

2008年07月27日 | テレビ&ポップス
 
 ミステリー・チャンネル“フロスト警部 泥棒の忘れ物”を見た。

 前の書き込みのうち、“フロスト警部”ものが、社会風俗的なネタを絡ませすぎるという点は、訂正しなければならない。
 “フロスト警部”(のテレビ版)は、放映当時(1990年代から2000年代の初め)の社会的背景なしには成立しない。サッチャー政権時代の余韻から、警察の人員削減が田舎の警察にまで及んできたり、田舎町でも青年の薬物中毒が広まっていたり、といったことを抜きに、テレビ版フロストは語れない。

 今回の“泥棒の忘れ物”も、麻薬の売人殺害をめぐる事件である。
 これに絡んでくるのは、ゴルフ場の駐車場から高級車を盗む常習窃盗犯の事件。面白いのは、イギリス社会におけるクルマの記号ないし象徴的意味がよく分かるのである。

 窃盗犯がゴルフ場の駐車場から次々と盗む車は、アウディに始まり、、ベンツ、レンジ・ローバーなどなど。
 ワインレッドのベンツの所有者は地元デントンのバイオ産業の社長だが、その社長が娘に買い与えている車はオペル・ヴィータである。ちなみに、フロストが乗っているのは水色のボルボのステーション・ワゴン(前の書き込みの右隅にチラッと映っている)。

 ところで、がっかりしたのは、殺された麻薬の売人が乗っているクルマが、フォルクスワーゲンのゴルフだったこと。

 6月末に、ゴルフTSIトレンドラインというのが発売になり、値段は248万円で、燃費が15.4km/Lに向上したというので、つぎは(といっても買い換えるのは数年後だが)ゴルフでもいいかなと思っていたところだったのだ。

 僕自身は、クルマは便利な移動の道具にすぎないのであって、クルマによって自己主張したり、「所有する喜び」を味わったり、ましてや“ステイタス・シンボル”として地位を誇りたいなんて気持ちはまったくないのだが(誇るような地位もカネもないし)、クルマをそのような記号として見る目が世間にはある。

 大学の駐車場に白いベンツなどで乗りつける先生は、(クルマに記号性なんか認めたくない)僕自身が、やっぱり「変わった教師だな」という印象をもってしまう。その点、ゴルフは大学の駐車場でも許されるクルマである。

 高校時代の友人の親父さんに有名な画家がいて、その親父さんがVWのビートルに乗っていた。あるとき、彼にビートルを売りつけた元ヤナセの営業部長か何かで、その頃は画廊を経営している人と一緒に新宿のバーに連れて行ってもらったことがあった。
 この元ヤナセの人の話では、VWビートルを輸入した当初、ヤナセでは医者や大学教授や芸術家にターゲットを絞ってダイレクト・メールを送ったのが成功して、「ビートルはインテリの乗るクルマ」という評判が定着したということであった。

 確かに、昭和30年代には、祖父の教え子の大学教師でビートルに乗っている人がいた。近所の金持ちの開業医の軒先にもビートルが駐っていた。いまなら、BMWやベンツだろうが。
 ゴルフも、当初はそんなビートルのイメージを受け継いでいたが、それがとうとう今日の“フロスト”では麻薬の売人の愛車である・・・。
 なんとも寂しい話である。

 * 写真は、ミステリー・チャンネル“フロスト警部 泥棒の忘れ物”(原題は“Key for the Car”、1999年製作)から、乗り捨てられた赤いゴルフ。

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