豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

霧生和夫 『バルザック』(中公新書)

2020年05月21日 | 本と雑誌
 
 承前 (バルザック『結婚の生理学』つづき)
 ・・・と書いた後で、読み始めた。
 序章と第1部<考察1>まで読んだところで、この小説のテーマが「姦通」であること、題名がサヴァラン(洋菓子の?)の「味覚の生理学」に由来することは、解説者たちの知見ではなく、バルザック自身が語っていることを知った。
 解説を読み、月報を読んでから、いざ小説本体を読み始めるなどという邪道を歩んだための失敗であった。

 なお、霧生和夫「バルザック」(中公新書、1978年)によると、「結婚の生理学」はバルザックの第2作である。第1作が「ふくろう党」ということは、東京創元社版のバルザック全集は作成順(か発表順)に配列されているのだろうか。
 「人間喜劇」は全26巻で、東京創元社の全集も26巻ということはこの全集はオリジナルの「人間喜劇」と同じ構成なのだろうか。
 ちなみに、霧生は “ La Comedie humaine ” を「人間喜劇」と訳すのは不適切であり、「人間模様」または「人生劇場」という訳が忠実だろうという(165ページ)。
 「人生劇場」は別な意味で不適切だから(尾崎士郎!)、「人間模様」だろう。

 サロイヤンの “ The Human Comedy ” を高校か予備校時代に読んだ。あれも「人間喜劇」と訳されていたが(小島信夫訳、晶文社)、内容的には、日本語でいう「喜劇」よりは「模様」だろう。
 ぼくが読まされた章は、郵便配達のアルバイト(勤労動員だったかも)をするカリフォルニアの田舎町(イサカ)の少年が、子か孫の戦死を知らせる郵便を老母(老婆)宅に届けるという話だった。

 ついでに、モームの「人間の絆」(The Human Bondage)は「絆」ではなく、「しがらみ」とでも訳すべきだと、かつての同僚だった英文学の先生が言っていた。
 あの二人の関係のどこが「絆」なのかと長年訝しく思っていたのだが、その先生の言葉を聞いて積年の疑問が解けた。

 2020年5月21日 追記


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