チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「針と糸」 小川糸

2024年09月08日 | 

晴、26度、81%

 何かの書評で「小川糸」さんは母親との確執がありそのことを書いた本が「針と糸」だと知りました。始めて読む作家の本です。新刊ではありません。「小川糸」さんの「食堂カタツムリ」は以前に映画で見た記憶があります。その後、動物の名前を本の題名にした新刊を幾冊か見ましたが、一度も手にしたことがありませんでした。

 母親との確執を題材にした本はたくさんあります。母娘の関係は一言では括り切れないものがあります。本当に仲の良い母娘だと思っていた方から「実は母に苦しんでいました。」とお聞きした時は大層驚いたものです。母親は概して娘を支配したがるように思います。子供の数にもよります。兄弟、姉妹がいるいないかもこうした母娘の確執に違った様を表します。この私もそうした感情を小さい頃から母に持ち続けてきた一人です。11年前に母が逝った後ですら心の底から母を嫌いでした。最近です、その重い心が少し揺らぎ、冷たいものが溶け始めています。そう思うのも束の間、また黒い雲が心を覆います。

 この本を読み始めて初めて「小川糸」さんの写真を開けました。私より16歳お若い方です。年齢、育った環境も知っておくと本を読み進む上で背景が見えてきます。まして、ご自分のことを書かれたものなら尚更です。「小川糸」さんのお母様は7年前にお亡くなりになったそうです。癌を患い認知症も進むお母様を見ながら、「母を愛おしく思いました。」と綴られています。お母様からは亡くなる前に「こんな母親ですまなかった。」と言葉をもらったそうです。お母様が亡くなる前に「小川糸」さんは心の氷が解けた方でした。そのことに安堵しました。いつまでも暗く冷たい感情を抱えているのは辛いものがあります。

 この本は当時お住まいだったベルリンの話、犬の話にもページを割かれています。読みやすい文体、言葉選びも書かれている内容もすんなりと心に落ちる作家です。

 初めて手にしたの本から、一気にその作家の本を読み漁ることがあります。なにぶんにも30年日本を離れていました。若い作家の本を知りません。「小川糸」さんの本はこの1冊で十分です。


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