晴、8度、70%
建築家中村好文さんは建造物、大きなビルディングではなく住宅の設計で有名な方です。作られれる家は大邸宅ではありません。機能性、これ見よがしでないデザインに富んだこぢんまりとした住宅が多い様に思います。
高校時代、建築家、詩人の立原道造が「ヒヤシンスハウス」という小さな家を考えました。立原の文章から「ル・コルビジェの小さな家」を知りました。それから随分時間が経って、木工作家「三谷龍二」の小さい家を知りました。この家を設計したのが建築家中村好文さんを知った最初です。確か「三谷龍二」の家では賞を取られています。以来日本に帰国する度に「中村好文」さんの本をトランクに入れて持ち帰りました。
「小さな家の物語」は1992年に中村さんが設計した家の話です。上総の田舎の小さな家は建てられて20年後、持ち主が手放すことになりました。その小さな家を設計した中村さんと友人3人で共同で買い取ります。20年の歳月、小さな家は寂れた様子に変わっていたそうです。設計者としては心が痛んだのでしょう。家をシェアすると言っても実際に居住するのではなく週末の家として使ったり、中村さんの大学のゼミの会場にしたりしての使用です。この本、家に手を加える段階での設計の詳細が記されています。私にはよくわからない領域です。
設計者の気持ちに応えて、「小さな家」は輝きを取り戻しました。
この本を読みながら、今私が住む父母から受け継いだ家を思います。家は人が気持ちを込めて住んでいるかそうでないかで確かに輝きが違います。大邸宅、小さな家の違いはありません、住む人の心が反映していると思います。家が生き生きしていることは即ち住む人が生き生きとそこで生活をしていることです。私の家は母が一人で住み始めて42年、掃除も雨漏りの修理も庭の手入れもされずにいました。この家に帰る度に荒れて行く家を寂しく思いました。
主人のおかげで家は改築され、庭も手を入れました。5年前住み始めてみると、こうしたいああしたいと欲はありますが、人並みに住める家になりました。家が喜ぶ様に風を通してやります。家が喜ぶ様に汚れた場所は拭いてやります。家が喜ぶ様に小さな繕いは私の手でトントン。
昔からこの家を知る方達が通りすがりに「いい家になりましたね。」と声をかけてくださいます。中村好文さんの「小さな家の物語」は改めて今住む家への思いを見直すことができました。やっと暖かくなった庭で読み終えた今年最初の本です。
愛情を込めて良く手入れされたお宅だなぁ、と感じています。
憧れのお家ですよ。
8年前までは酷かったのよ。ずっとブログを読んでくださってる方達はご存じです。やっと人並みの家に、生きてる家になりました。