気ままに

大船での気ままな生活日誌

路地を抜けて宝戒寺コース 初秋

2006-09-15 21:22:08 | Weblog
小町、雪の下の路地を歩いて、宝戒寺に至る散歩を楽しみました。その日は、雨がしとしと、という天候でしたが、路地歩きはむしろ、こういう静かな雰囲気の方が似合います。鎌倉駅東口を降り、若宮大路を少し上がり、警察署のところを右に入り、すぐ、雪の下教会の向こうを左に入ります。ここから、路地歩きがスタートします。少し進み、右に曲がり、もう一度、左に曲がり、まっすぐ行くと、お稲荷さんが見えてきます。お稲荷さんの赤い垣根と向かいお宅の緑の生け垣のコントラストが映えます。この辺りの風景がいいので、しばらく佇み、されど我らが日々と、来し方に思いを巡らします。

私はお稲荷さんが好きで、牛久に居たときも、女化(おなばけ、という怖い名前です)稲荷によく、お参りしました。霊験あらたかで、私の気の進まない人事案が進んでいたとき、お参りしましたら、翌日、その案がつぶれた、いうことがあって、それ以来、お稲荷さんには、頭が上がりません。ついでに、大船軒のおいなりさんも好きです。

この宇都宮稲荷の前に宇都宮辻子(ずし)幕府跡という石碑が建っています。四代将軍の藤原頼経(源氏は3代でつぶれています、北条さんの策謀で)の時代の幕府です。若宮大路幕府跡(3度目の幕府地)というのも、300メートル先にあります。この辺は、今は静かな住宅街ですが、昔は鎌倉の霞ヶ関だったのですね。すーっと、800年前の風が、どこからか、入りこんできます。

路地をさらに、進むと、大仏次郎さんがお住まいだった家の前に出てきます。粋な黒塀、見こしの松の、素敵なお宅です。この辺りもついつい、佇んでしまいます。お宅は、年に何回か一般公開しており、何年か前にみせていただいたことがあります。猫を何匹も飼っておられたようで、表札にも眠り猫の絵が描かれていました。大仏次郎さんは鎌倉文士の代表的な方ですが、鎌倉の風致保存に力を尽くされた方だとも聞いています。このような、めったにない、情緒ある路地もいつまでも残して欲しいと思います。ねむり猫を起こして、目を光らせてもらいましょう。

いつのまにか、路地を抜けて、小町大路に出てしまいました。そのすぐ先に宝戒寺があります。ここは、歴代の北条執権(得宗家といいます)が住んでいた所です。あちこちに、北条家の家紋の、みつうろこが目に入ります。新田義貞により滅ぼされた、北条九代の霊を慰めるため、後醍醐天皇が屋敷跡に建立したのです。本尊は子育経読地蔵大菩薩という、ちょっと変わった名前の仏像です。杉本寺と同じ天台宗のお寺です。

宝戒寺といえば、白萩です。最盛期には、わんさと人が押し寄せます。今は、まだ一、二部咲きという頃ですが、私はこういう時期の宝戒寺が大好きです。山門に入っても人影がほとんど見られません。ただ、先端に清楚な白い花を少しだけつけた、覆い被さるような萩の枝が迎えてくれるだけです。また、この時期には、まだ萩はそれほど目立たないので、萩以外の植物にも自然と目が向きます。これもいいですね。赤ではない、白い彼岸花が満開でした。このお寺は、どうも白がお好きなようです。芙蓉もなかなか、でした。裏に回ると、無患子(むくろじ)の木がたくさんの実をつけていました。熟した実がたくさん落ちていました。以前、この実の外皮を剥いた硬い黒い実をお正月の、はねつきの羽根の玉に使用したそうです。こんな、なつかしい樹木がここにはあるのです。

本堂にも上がって、お参りすることが出来ます。ご本尊と両隣の梵天・帝釈天像をお参りして、ふと見上げると、高倉健さん名のお供えものがありました。以前きたときも目にしました。どういう縁があるのでしょうか。先月、テネシーワルツ、江利チエミさん物語をみたばかりですので、気になりました。そのうち、調べてみたいと思っています。

左端の窓際の文机に白萩と書かれたノートが、2冊ほど置いてあります。ここに来られた方が、こころに浮かぶ、よしなしごとを記すノートです。覗いてみました。「お母さんを長生きさせてください」とあって、続けて少し、小さい字で、「私もついでにお願いします」とありました。また、「萩の咲き始め、白い彼岸花、そして無患子の黒い実、初秋を感じました」と、美しい女文字で書かれていました。きっと、俳句か、水彩画を趣味にしているような、上品な50代くらいのご婦人だろうなと、勝手に想像しました。

雨も上がっていましたので、本堂を降りて、もう一度、境内を一回りしました。咲き始めの白萩、白い彼岸花、無患子の実を改めてゆっくりながめました。そして、私も、白萩ノートのご婦人と同じように、これぞ、初秋の景色といったものを、ここでみたような気がしました。





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