気ままに

大船での気ままな生活日誌

一茶の風景

2011-06-08 18:39:05 | Weblog

午前中、鎌倉女子大の公開講座があった。芭蕉、蕪村、が終わり、今期から一茶に入った。生涯つくった句数が、芭蕉が980句、蕪村が2880句で、一茶は、なななんと、2万句をゆうに越えているという。芭蕉は完全主義、一茶は不完全主義、蕪村は中間主義なのだ(笑)。でも、先生がいうには、一茶は句の良しあしは読者にまかせればいいという主義だったらしい。もし、自分で厳選していたら、今は名句と讃えられるものも、世に出なかったかもしれない、という。そういう考え方もいいかもしれない。科学者でも、ちょっとした発見でも、すぐペーパー(論文のこと)にする人もいれば、ねりにねって完成させるまで発表しない人もいる。前者はペーパーメーカーと、軽んじられることがあるが、ねりにねっている間に、他の人に発表され、無価値になるよりは、ずっと良い、とぼくは思う。

それに、価値観は時代によっても変わるわけだから、当時は、なんだこの句はといわれたものが、10年後、50年後、100年後に、逆転評価される場合だってあるわけだ。科学者だって同じだと思う。ペーパーにしてさえあれば、これは今をときめくノーベル賞級研究の源流だと、50年後に評価をされる可能性もあるのだ。

目出度さも中位なりおらが春
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
名月をとってくれろと泣く子哉
やれうつな蝿が手を摺り足を摺る

こぞの五月生まれたる娘(さと)に一人前の雑煮を据えて(文政二年正月)
這え笑え二つになるぞけさからは

さとの死に対しての句(文政二年、疱瘡で亡くなった)
露の世は露の世ながらさりながら
雪ちるやおどけも言えぬ信濃空
ともかくもあなたまかせの年の暮

これらの句は、江戸時代ではどのような評価を受けていたのだろうか。

学内の風景

ほそばたいさんぼくの花

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清方の描いた歌舞伎、新派、文学

2011-06-08 08:56:22 | Weblog

鏑木清方の芝居好きは有名である。だから、芝居を題材にした絵も多い。今回の展示は、それに因んだものを中心に展示している。おまけに講演会があった。事前申し込みだから、その日は休館で、ぼくらだけが、お話がきけて、独占的に展覧会もみられる、という贅沢三昧、中華三昧(お昼に冷やし中華食べたので)の一日だった。

半蔵門の国立劇場の二階のロビーに、清方の”野崎村”が飾ってあるという。もちろんで歌舞伎絵で、二世市川松蔦のお染と六世市川門之助のお常を描いたものだという。その歌舞伎絵を毎日みているという、歌舞伎公演の制作・演出に長く携わってこられた大木晃弘氏による講演をまず聞いた。満席の盛況だった。

話の内容は、清方の描いた歌舞伎、新派・文学、舞台装置、役者の似顔絵、雑誌”歌舞伎”の表紙絵、芝居絵(スケッチ)の順に、パワーポイントで紹介するというものだった。全部で30枚以上はあったと思う。それだけ清方が力を入れていたことがわかる。

歌舞伎の専門家がみても、清方の描く歌舞伎役者の所作が的を得ていて、勘所をとらえているという。相当の歌舞伎通でなければ描けないものだと言っていた。役者さんの”性根”まで描いているという。実際、通しの絵を連続してみると、実に動きがなめらかだ。もちろん、新派でも同様だし、逆に文学では、清方の婦系図の口絵のイメージから”めの惣”の名場面が誕生したそうだから、すごい。舞台装置も”高尾さんげ”などをつくっているが、どうしても美術だけで押すわけにはいかないものなので(使いかってのよさも必要)、小村雪岱のようには長く、続けなかったようだ。似顔絵もいくつも描いている。

 そして、展示室も学芸員さんが説明してくれる。まず、”薄雪”。福富コレクション展でもみたばかりだが、本当にいい絵だ。近松の”冥土の飛脚”、心中前に最後の抱擁する梅川と忠兵衛。はかなく消えゆく薄雪のように。鏑木清方記念館に初の”お里帰り”。この下絵(清方館所蔵)も並べて展示してある。見逃せない一対だ。

そして、たけくらべの美登利(表紙絵原画)、日本橋芸者と医学生の恋物語”日本橋”(挿絵原画)。金色夜叉(挿絵原画)と芝居絵がつづく。さらに、”道成寺”、色っぽい”高野聖”、色っぽくない(笑)”女役者粂八”は似顔絵だ。

そして、ぼくがなにより楽しみにしていたのは、色っぽい”刺青の女”。これも福富コレクションでみたばかり。役者ではないが、市中の女性から姉御とよばれていた女をモデルに描いたそうだ。いつみてもいい。刺青は黒い揚羽蝶と芥子(けし)の花。

昨晩、紹介した紫陽花もふたつ。この季節に相応しいものだった。

薄雪

たけくらべの美登利

そして刺青

 

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