3年ほど前、三百年の歴史をもつ越中八尾の伝統行事、おわら風の盆をみてきた。それも、八尾の宿(宿泊施設が少なく、めったに泊れない)だったので、哀愁の、真夜中の町流しもみることができた。心に残るお祭りであった。その、おわら風の盆の町流しが、夕方の野毛の柳通りでみられるというので、喜び勇んで、出掛けてきた。
ほろ酔いになって居酒屋さんから出ると、三味の音色が聞こえてくる。柳通りに急ぐと、そこでは、風の盆の町流しが始まっていた。揃いの浴衣姿の女踊り、これまた揃いの股引に法被姿の男踊りと続き、越中おわら節を奏でる三味線と胡弓の演奏隊と歌い手があとに続く。おどろいた。数人の踊り手と三味線くらいかと思っていたが、とんでもない、本格的な一隊だ。それにしては、観客が少ない。宣伝が十分ではないのかもしれない。しかし、ぼくにとっては、こんなにゆったりと観られるぜいたくは、またとない。しばらく後追いをした。いったん休み、今度は中央部で”舞台踊り”と随分、楽しませてもらった。
哀愁を帯びた音色の胡弓を弾いている人がひとりいたので、休み時間に写真を撮らせてもらった。八尾では胡弓の名手は、大変な人気者で、その人が演奏する流しには大勢の人々が後追いする。でも、そういう人は、なかなか出てこないで、観客が少なくなった夜中に流すらしい。
この行事は、”柳通り流し芸”ということなので、風の盆だけではなく、”新内流し”とか津軽三味線、アコーディオン、ギターなどの流しも、柳通りを演奏しながら歩いてくれる。通りの居酒屋にも入って演奏してくれるので、酔客は喜んでいた。アコーディオンの女性は楽しい人で、地元の歌として”崎陽軒のシューマイの歌”やサービスで炭坑節や東京音頭まで歌ってくれた。地元の浜っ子が歌に合わせて、楽しそうに踊っていた。ぼくも踊ろうかと思ったが、手拍子だけにした。
思いがけず、おわら風の盆をみられ、とても楽しい夜だった。また来年も来てみよう。あそこの居酒屋さんも、安くて、うまかった、また寄ってみよう。そこは来年まで待たなくてもいい。ワイフが一週間ほど、熊本に行っているので、その間にまた来よう(汗)。
右が胡弓