おはようございます。早いもんで、もう6月。月日が飛ぶように過ぎ去りますね。さて、今朝の話題は又兵衛絵巻物と参りましょうか。
MOA美術館は、岩佐又兵衛の三大絵巻、山中常盤物語、浄瑠璃物語、堀江物語を所蔵していて、時々、それぞれの全巻を拡げて展示してくれる。今回は山中常盤物語絵巻、全12巻。2011年が初見で、2012年、そして今回で三度目となる。2012年はMOA開館30周年記念ということで、なんと、三大絵巻が三期連続して次々と、全巻、展示されるという絢爛豪華な展覧会だった。ぼくの2012年の展覧会ベストテンの第1位となったことは言うまでもない。だから、そのときのブログ記事は、ぼくとしても破格の力の入れようで(笑)、この物語の全容を、二回に分けて、絵入りで紹介している。だから、詳しいことは、こことここでどうぞ、というわけで、ここでは簡単に紹介したい。
源氏の御曹司、牛若丸が、平家討伐のために、奥州の藤原秀衡に援軍を頼みにゆくが、その後を追う、母、常盤御前が山中の宿で盗賊に襲われ、殺されてしまう。激怒した牛若が策を練り、盗賊をおびき寄せ、斬り倒す。そして、大軍勢を引き連れて、京に上る途中、山中の宿に立ち寄り、常盤の墓前で手厚く仏事をいとなみ冥福を祈る。いってみれば、仇討物語である。ストーリーはシンプルだが、中に描かれている人々の表情、衣裳、屋敷の内部などが、実に克明に、かつ、絢爛豪華に描かれている。
全12巻で、一巻約12.5メートルだから、全巻となると、なんと、150メートル。これらのほとんどすべてが、4室にわたって拡げられている。東京と違って、観客も少ないし、ゆっくりとみられるのがなにより。素晴らしい展示。
前半のハイライトは、第五巻の常盤御前が盗賊共に殺される場面。身ぐるみはがされ、刃にかかる。盗賊が立ち去ったあと、宿の太夫が駆け付けるまで、血を流しながら、瀕死の状態の常磐御前を執拗に描き続ける。7シーンくらいある。信長に謀反を起こした荒木村重の妻として惨殺された、又兵衛の母への想いが強く現れたのではないか、という説がある。
そして後半のハイライトは、牛若が盗賊共を山中の宿におびき寄せ、仇討する第9巻。これがまたすごい。まず、牛若が一人の盗賊の首をはねる。それをみた五人の盗賊が牛若を取り囲む。牛若は霧の印を結び、盗賊たちの眼をくらませ、小鷹の法を使って飛び上がり、全員を次々と切り倒す。これも、又兵衛の気持ちが牛若に乗り移ったようだ。
第11、12巻で、牛若は平家打倒のため十万騎の大軍を率いて都へ上る。うつくしい武具をつけた侍たちの列が延々とつづく。そして、大軍団と共に、常磐御前の墓前で盛大な法事が営む牛若。最後を飾る豪華絢爛たるシーン。
何度みても、素晴らしい絵巻物。
全12巻
館内から初島を望む。五月晴れの素晴らしい天気だった。
光琳屋敷に入る唐門。大磯の三井別邸から移築したそうだ。
光琳屋敷