おはようございます。
八幡宮の裏口付近にある神奈川近代美術館・鎌倉館で”美しい本/湯川書房の書物と版画”という当館コレクション展が行われている。若いころは、神田の古書店街をよく歩き、稀観本を見つけると、とても買えないが、しげしげ眺めたものだ。だから、こういう展覧会があると、覗かないわけにはいかない。
湯川書房とは?大阪、京都を拠点とした湯川書房は装幀や製本に意匠を凝らした限定本を出版し、2008年に活動の幕を閉じるまで多くの愛書家を魅了しました。「美しい本」の創造を掲げ、版画家の木村茂、岡田露愁、柄澤齊、坂東壮一、染色家の望月通陽、画家の戸田勝久ら気鋭の美術家と協働し、文学と共鳴する工芸品ともいうべき書物を作り出しました(公式サイトより)。
美しい本というと、つい、世界一うつくしい本、ランブール兄弟の”ベリー公のいとも豪華なる時祷書”を思い起こしてしまうが、ここではそういう種類の豪華本ではない。湯川書房の書物というと、下の写真のように、多くはこんな感じで、シンプルな装幀である。この中の赤い表紙の本は、村上春樹の”中国行のスロウボート”で、その下が”本と私”富士川英郎著、望月通陽(型染)。どれも、200部以下の限定出版なので、めったに見られない本である。蒐集家の岡田泰三氏の寄贈により2016年度から神奈川近美の所蔵になっている。
一方、こんな豪華本もある。
”oedipus” 望月通陽(著・型染)(1981)ギリシャ神話のオイディアス王を主題にした、全ページ総型染の絵本。今回も撮影禁止(コレクション展なのだから許可すればいいのにと思うが)なので、ちらしの写真から。これと並んで、布製の豪華本があったが紹介できない。
湯川書房の始まりは、1969年、湯川が辻邦生(北の岬)と小川国男(心臓)の作品が気に入り、著者に直接、装幀の依頼をし、了解を得ての発刊である。その後、二人の著作ばかりではなく、多くの作家の装幀を引き受けた。その中には大岡信、加藤周一、谷崎潤一郎、白洲正子、吉行 淳之介らの名も。
小川国夫「心臓」(1969)
辻邦生 神さまの四人の娘 木村茂・銅版画(1972)
谷崎潤一郎家集(1977)
加藤周一「加藤周一歌集」(1975)
加藤静允 景徳鎮古窯越州古窯南宋官窯址訪記 (2007)
柄澤齊『雅歌』(木口木版画)(1985)旧約聖書の詩篇に版画家・柄澤齊による木口木版画8葉が添えられた、限定70部の美しい本。
本展では、これら美しい本が70冊あまり、そして版画家、柄澤齊の代表作も紹介される。本好きにはこういう美しい本を眺めるだけでもうれしいものだ。4月16日まで開催しているので、八幡さまに来た時にまた、寄ってみようかと思っている。
それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!
こういう芸術には、匠の技もあるのでしょうね。
建物の昔ながらの製法も、今は廃れてしまいましたが文化の衰退に唖然とします。
よい時期にお出掛けされましたね。
立春ですが、ここから一年が始まります。
神田の古書店、中に入ったら動けません。
あの空間は、本好きには堪りません。
>神田の古書店街をよく歩き、稀観本を見つけると、とても買えないが、しげしげ眺めたものだ。
神田の古本屋街、一度しか行ったことがないのですがそんなに高価の本もあるんですか!
>文学と共鳴する工芸品ともいうべき書物を作り出しました
そんな世界があるんですか!
「ベリー公のいとも豪華なる時祷書”」どこかで見たことがあると思ったらイタリア在住で絵を描かれているご婦人のブログによく引用されてましたね。
うわ~、さすがに美しい本は表紙が凝っていますね。
ベストセラー向きの大衆本じゃないのでしょう!
>どれも、200部以下の限定出版なので、めったに見られない本である。
なるほど、ちょっとした美術品に思えます。
>一方、こんな豪華本もある。
ほんとですね。
美術品そのものです。
小川国夫「心臓」(1969)から下は手垢やコーヒーの染みなんてつけたら大変ですね!
目の保養になります。
家に置いておくにしてもガラス扉かついた埃の付かない本棚じゃーないともったいないですね。
>柄澤齊『雅歌』(木口木版画)(1985)旧約聖書の詩篇に版画家・柄澤齊による木口木版画8葉が添えられた、限定70部の美しい本。
なんと!版画そのものですよね。
>本好きにはこういう美しい本を眺めるだけでもうれしいものだ。
本であふれたおうちだと、置くところが足りなくなる気がします。
いやー、またまた珍しい世界の紹介に感謝です。
古書店の雰囲気、ぼくも大好きです。宝さがしをするような。でも、神田すずらん通りも昔の面影がだいぶ消えましたね。
むしろそういう、高価なものを狙って歩く人も多いようですよ。稀観本を中心に置くお店もありますね。
>文学と共鳴する工芸品ともいうべき書物を作り出しました/そんな世界があるんですか!
ぼくなんかは文庫本で済ませてしまいますが、工芸品のように飾りたい人も多いのでは。
>小川国夫「心臓」(1969)から下は手垢やコーヒーの染みなんてつけたら大変ですね!
そうですね。一種の美術品ですね。古書でも高値で取引されるようです。ぼくはこうして展覧会で魅せてもらえるだけで十分です。定年時に蔵書はだいぶ整理しましたので、もう増やすつもりはありません(笑)。
ありがとうございました。