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北尾トロ著『ヒゲとラクダとフンコロガシ』

2008-04-02 16:43:32 | ノンジャンル
 今朝の朝日新聞で映画評論家の山根貞男さんが映画「靖国」が劇場側が危険を防止するために映画「靖国」を上映するのを中止した問題に言及した記事が載っていました。映画はナレーションなく、事実を淡々と映しだしていくもので、優れたドキュメンタリー映画なのだそうです。それだけに、一般公開して見た人それぞれの意見を聞いてみたい映画であるとのことでした。まったく同感です。

 さて、中川カンゴローさんが写真を担当した北尾トロさんの'99の著作「ヒゲとラクダとフンコロガシ」を読みました。
 インドの砂漠で、ガスも電気も水道もなく暮らしている人たちがいる、という情報を得て、北尾さんと中川さんは、牧畜が収入源で自給自足のために農業をやっているというバルナ村にやってきます。その村にはゲストハウスという旅人のための宿泊施設があって、滞在している間は食費も宿泊費もただです。
 村の掟は、むやみに葉だを出さないこと、既婚の女性の写真を撮る時には事前に許可を得ること、トイレは人の見えないところですること(といっても、ここの人は皆視力がいいので、歩いて20分も行かないと村人に見られてしまいます。)、初対面の男の人と話す時にはビデュ(タバコのようなもの)を勧めること、そして約束を守ること。尊敬されている人は年長者(60才になるとターバンの色が白になります)、祈祷師、強い肉体の持ち主で、特に力の強い男が価値あるものとされています。そして男の象徴はヒゲで、見事なヒゲを持った者ほど尊敬の対象になります。
 放牧されている無数の家畜ではラクダがエース格で高く売れ、次が牛、羊、ヤギの順。しかし彼らは祭りの時を除いて肉は食べず、ベジタリアンで、3食同じものを毎日食べます。石と牛の糞と土で造られた家は5年ごとに建て替えられ、家の中には家具がありません。娯楽はもっぱら話をすることで、家族の絆が非常に強く、村人たち全員が家族のようなものです。
 子どもは明るく、メガネをかけている子はいません。物を大切に使い、15才まではきつい仕事はさせられませんが、親の手伝いはできるだけ多くさせられます。したがって、素直な子が圧倒的に多いのが特徴です。
 北尾さんたちはヤギの乳しぼりに挑戦しますが、下手なので、子どもが教師となり毎日練習させられます。また、力が物を言う村なので、相撲を子どもたちに教えると、すぐに仲良しになれました。
 村にはいろんな人がいて、村で特に尊敬されている、素手でラクダと戦って勝った男、陽気で面倒見がよく幼い子供たちの人気者で、著者たちに付いて回った14才の少年、人の気持ちを見抜くと言われ尊敬を集めていた、将来祈祷師になることを期待されている8才の少年、閑人でしょっちゅう遊びに来ていた皮職人のじっちゃん、などなど。
 北尾さんたちは自然とともに生きる彼らの生活に魅了され、また自然の美しさにも魅了されます。最後には彼らの滞在に反対する一派を抑えてくれていた案内人と村の長老の努力も知り、彼らに感謝しながら著者らは村を後にします。
 美しい中川さんの写真も満載で、村の雰囲気が伝わって来るとてもいい本だと思いました。絶版の本なので、なかなか手には入りにくいかもしれませんが、オススメです。