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『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』

2008-04-14 16:45:52 | ノンジャンル
 北尾トロさんの裁判傍聴ルポシリーズの第一作目の本、'03年に単行本が刊行された「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」を読みました。です。始めの方で裁判そして裁判の傍聴に関する初歩的な事柄が説明され、後半は著者が面白いと思った裁判に関してのルポルタージュとなっています。最後には、傍聴しているうちに知り合いになった傍聴マニアの方々との座談会も載せられています。ちなみに北尾さんが傍聴したのは東京地裁の刑事・民事と高裁の刑事です。
 さて、まず裁判についての説明ですが、私がこの本を読んで初めてしったことを列挙すると、
・裁判のスケジュールは裁判所の受付で見られるようになっていて、〈覚醒剤〉〈強制わいせつ〉〈私文書偽造〉〈恐喝〉〈詐欺〉という内容まで分かり、この順で傍聴の人気があること。
・左右でどちらが弁護側で検察側かは決まって無い事。
・被告の服装は私服で、殺人事件の被告が「Love & Peace」と書かれたTシャツ、交通事故死の被告がドクロマークのTシャツ、傷害事件の被告がミッキーマウスのTシャツを着て来ることもあること。
・喫煙できる場所が1ケ所しかないため、被告側、検察側、裁判関係者、傍聴人が一同に会してタバコを吸うこと。
・強制わいせつで被害者が証言する際には、普通傍聴人は退席させられること。
・弁護人は被告が拒否すれば事前の打ち合わせなく裁判に臨まなければならないこと。
・女性は毅然とした美人が多いこと
などです。
 そして、著者が体験した面白エピソードは、
・傍聴マニアに知り合い、パソコンで打ち出した主要な裁判の日程表や、テレビに映った裁判官や被告の顔のリストを作っている人までいたこと。
・被害者が女子中学生の強制わいせつ(痴漢)の公判の傍聴人の過半数30人以上が制服姿の女子高生だった時は、皆張り切って、特に被告の母の謝罪の嵐、無言の被告に対する裁判官・検察の質問攻め(裁判官に至っては「ぼくがあなたの雇い主なら、あなたなんかとっととクビにしますよ」という中立の立場を完全に忘れている興奮ぶり)が見れたこと。(ちなみに30人以上の女子高生は社会勉強のため、先生に引率されてきたらしい。)
・「仕事がないから悪いことするしかないでしょ」と幼女強制わいせつを繰り返す男。
・息子を暴走族の集団暴行で殺された父の「できることなら被告を皆殺しにして私も死にたい。息子が死んでから一年たったが、被告たちを殺す方法ばかり考えている」という言葉。
・裁判所の前で単身抗議行動をする人たちに会えたこと。(抗議文の看板の横で死んだようにうつむいている中年男、「○○化粧品はインチキだ」というボードを日傘をさしながら掲げているオバチャン、広島から22時間もかかって来て、民事裁判での自分の体験を本にして売るオヤジ)
・入り口付近で野球賭博の話をしているヤクザを始め、傍聴人が大親分を含めてヤクザばかりで、被告が組長の裁判。18年の有罪判決が出て、被告が退廷しようとすると、傍聴席から一斉に「アニキ、がんばって」といくつかの声が飛んだ。
などです。

 こうして著者は裁判に人間模様を見、また裁判とは決して公正中立の場ではないこと、人間がやっているのでだらけることもあるし、張り切る事もある。裁判の流れで結果は変わるということ、被告の顔を見れば大体見ごたえのある裁判かどうかが分かるようになり、誰も注目しない自分だけが傍聴人のような裁判でも人間ドラマを感じる裁判があることを学びます。
 これから裁判員制度が施行されますが、その前にこの本を読んでおくと少し安心できると思います。本自体としても「鼻毛~」と並ぶぐらいの面白さですし、自分が裁判員に選ばれたらどうしようと思われる方、人間ドラマに飢えている方には絶対オススメの本です。ぜひ手に取ってみてください。