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エリック・ロメール監督『獅子座』

2008-04-23 16:17:32 | ノンジャンル
 スカパーの720チャンネルの「洋画★シネフィル・イマジカ」で、エリック・ロメール監督の'59年作品「獅子座」を久しぶりに見ました。
 パリに住む中年で独身のピエール(ジェス・ハーン)は叔母から莫大な財産を相続することになり、友人、知人をできるだけ集めて盛大にパーティーをします。が、相続はいとこが全額することが分かり、部屋代が溜まっていたピエールは夏のバカンスで閑散としたパリの街に放り出されます。友人、知人に連絡を取とうとしますが、皆バカンスに行ってしまって留守。親友も長期の海外出張で秋まで帰って来ません。ひたすら暑いパリの街を歩くうち、ズボンに染みがつき、靴底は剥がれ、汗で上着は濡れ、次第に汚くなっていきます。最後の金でパンを買い、空腹から万引きをしようとしますが店主に見つかり、あやうく逃れ、店の売れ残りが地面に落ちているのを拾って食べ、噴水の水を飲み、空腹を抑えます。そのうち即興の出し物で食ってる浮浪者と一緒になり、ビッコをひくマネをしたり、浮浪者の言いなりになって動きますが、やがて馬鹿馬鹿しくなって浮浪者を置いて去ろうとしますが、そこでやっと知人に発見されます。実は、その直前にピエールのいとこが事故死し、叔母が死んだ時の倍の財産をピエールは相続することになっていたのでした。事情を聞いたピエールは狂喜し、友人の車に乗って夜の街に消えて行きます。残された浮浪者が彼は絶対帰って来ると叫び、獅子座がズームアップされて、映画は終わります。

 この作品はクロード・シャブロルが叔母から莫大な遺産を相続したことをヒントに作られた話で、実際この映画はその遺産をもとに作られた製作会社によって製作されました。'59年の作品ということは、トリュフォーが「大人は判ってくれない」を撮り、ゴダールが「勝手にしやがれ」を撮った年ということで、この映画もこの2作品とともにヌーヴェル・ヴァーグの産声を上げたことになります。その証拠に、ゴダールがパーティでレコードの同じところを何度も聞くサングラスの男として出演していますし、ホテルの管理人の妻役でクロード・シャブロルの妻で彼の代表作には必ず出演しているステファーヌ・オードランも出ています。
 作品自体はスタジオ撮影は一切なく、夏の暑さの中で少しずつ浮浪者に近づいて行く主人公を淡々とカメラが追うドキュメンタリーのような仕上がりになっています。オールロケというのもヌーヴェル・ヴァーグの特徴の一つで、またほとんどがミディアム・ショットからなっており、その辺もドキュメンタリーの印象を生んでいると思われます。以前に覚えていたラストシーンとは全然違うので、ちょっと驚きました。未見の方にはオススメです。
 なお、詳しいあらすじは「Favorite Movies」の「その他の傑作」の「その他の傑作の数々」のコーナーに載せておきましたので、ご覧ください。