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上橋菜穂子『精霊の守り人』

2008-04-10 16:03:46 | ノンジャンル
 上橋菜穂子さんの'96年作品「精霊の守り人」を読みました。
 「水の守り人」と呼ばれる妖精の卵を体内に宿してしまった皇子は、始め自分の子供がモノに宿られたとあっては自分の威信に傷がつくと考える帝に殺されそうになりますが、やがて「水の守り人」は天候を左右し、100年に一度産まれる卵か無事孵化しないと、大旱魃が何年も続くということが分かって、逆に皇子を守ろうとします。が、妖精の卵には「卵食い」という天敵がいて、過去にも卵を宿す者ともども「卵食い」に食われてしまったことがあるのでした。そして卵食いと皇子を守る女用心棒、薬草使い、帝の使い「狩人」たちとの間に壮絶な戦いが繰り広げられるのでした。

 これは古代の時代小説です。ファンタジー小説と呼ぶ人もいるようですが、私は内容とイメージが重ならないように思います。ここで行われているのは、戦闘であり、その中に友情や愛はほの見えますが、それが中心のテーマとなることはありません。不幸な星のもとに生まれた1人の少年を巡る権力争いが延々と語られます。最後も少年にとってはハッピーエンドではなく、読後感も今一です。
 また時代小説に特有の多くの登場人物、複雑な人間関係がここでも描かれていて、読んでいて「これ、どんな人だったっけ?」という部分がかなりありました。サグとナユグという2つの世界も分かりにくいし、味方が敵になったり、敵が味方になったり、人間関係も複雑です。ファンタジー小説というのなら、陰惨ではなく、もっと明るい冒険小説にしてもらいたいものです。