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生野慈朗監督『手紙』

2008-04-28 15:56:49 | ノンジャンル
 WOWOWで東野圭吾原作、生野慈朗監督の'06年作品「手紙」を見ました。
 両親のいない兄弟。兄は弟の直(山田孝之)の大学進学のための資金を稼ぐため無理して仕事をして腰を悪くし、仕事をクビになり、空き巣をしますが帰って来た住人と揉み合ううちに、過って相手をハサミで刺し殺してしまいます。判決は無期懲役。兄は自分のせいで大学進学ができなくなった弟に謝り、弟は自分のせいで兄が刑務所に入ることになったと思い遣り、手紙のやりとりでお互いに励ましあい、近況を報告しあいます。弟は進学を諦め、工場に勤めますが、上司の勧めもあって、小学校からの相棒とお笑いの道を本格的に目指します。ライブでテレビのプロデューサーに認められ、テレビに出演するようになり、自分達がメインの番組まで持つようになりますが、ネット上の書き込みで兄が強盗殺人犯だということを流布され、弟は相棒に迷惑がかかるのを恐れ、お笑いを諦めます。元のバイトのバーでまた働くようになりますが、工場で知り合った由美子(沢尻エリカ)がやって来て、私も本当に自分のやりたいことを直のようにやりたいと思い、美容師をめざしてるんだ、と言いますが、直は由美子につれない態度で接します。その後、弟は兄が強盗殺人犯ということで、バイトを次々に首になり、部屋の次々に追い出され、恋人も失い、そうしたことを知らずに手紙を直に送り続ける兄を次第に恨むようになります。大型電器店の社員になりますが、そこで内部の犯行とみられる窃盗事件が起こり、直は疑われて倉庫管理に異動させられますが、ある日会社の会長が訪ねて来て、直に兄が強盗殺人犯という事実は隠しきれないのだから、それを知られた上で前に進むしかない、と言います。そしてある人から君のことについての手紙をもらい、感動してここに来たことを告げます。直はひょんなことから、由美子が自分の名前をかたり兄に手紙を書いていた事を知り、また会社の会長に手紙を書いたのも由美子だと分かり、これからは由美子のことを自分が守って行くといいます。二人は結婚し、娘にも恵まれますが、兄のことが知れると社宅の人たちからも冷たくされ、娘の公園デビューでも他の母親たちは子供を連れて逃げてしまいます。弟は4年半ぶりに兄に手紙を書き、兄のためにどれだけ自分たちが苦しい思いをしてきたかを書き、兄とは縁を切って生活していくことを伝えます。由美子は兄からもらった最後の手紙を直に見せます。そこには直から縁を切るという手紙をもらい、自分の存在自体が罪なんだということが分かったので、今後は手紙を書かないようにします、と書いてありました。直は強盗殺人の被害者の息子のところを訪ねますが、家には上げてもらえても、焼香もお詫びの品も拒否されます。今だに兄のことを憎んでいるという息子は、兄から最後にもらった手紙を直に読ませ、これでもう終わりにしましょう、と言ってもらい、直は号泣します。直は兄のいる刑務所に元の相棒とお笑いコンビとして慰問に訪れ、ネタの中で自分にとって兄はかけがえのない血のつながった人だと言い、それを聞いた兄も号泣します。直の娘も無事に公園デビューを果たし、明るい光が差してきたところで映画は終わります。

 沢尻エリカと山田孝之が出演しているということで見ましたが、屈折した青年役をやらせたら右に出る者ははいない山田孝之は当然うまいのですが、沢尻エリカはミスキャストだと思いました。彼女はやはり強きな女性を演じさせた時が一番輝くようです。救いようのないラストシーンを書く東野圭吾にしては珍しくちょっと希望を持たせる終わり方をしていましたが、直が急に由美子と結婚する決意をするところや、大企業の令嬢(吹石一恵)と付き合うようになるところなどは、感情の流れが不自然で、まったく乗れませんでした。そして延々と強盗殺人犯の弟として差別され続ける直を見せ続けるストーリーも決して心地よいものではありませんでした。演出で特にひどかったのは大企業の令嬢の家で令嬢の父と直が会う場面で、安っぽい装置に、父親の紋切り型の台詞に安っぽいテレビドラマを見ているような気がしました。冒頭など桜の散る場面を背景に兄弟がお互いに手紙を読みあう声がかぶさるシーンなど、見るべきところもあるのですが、やっぱり嘘っぽい、感情的なリアリティに欠けるシーンが多かったのが残念です。生野慈朗監督、生き残っていけるのでしょうか?