みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

「鑑定医の無罪 訴えていく」調書漏えい事件 草薙厚子さんに聞く

2008-06-02 20:00:05 | ほん/新聞/ニュース
5月17日の「福井・情報公開訴訟(控訴審)の傍聴とカンパの呼びかけ」の記事で、
代理人を引き受けてくださった清水勉弁護士の紹介と、
『いったい誰を幸せにする捜査なのですか。』の本の紹介をしたが、
翌々日の5月19日に、著者の草薙厚子さんのインタビューが
毎日新聞に載っていました。



『いったい誰を幸せにする捜査なのですか。』
(草薙厚子著/光文社/2008/4/23)


福井情報公開訴訟の前日、清水勉弁護士に訴訟のレクチャーを受け、
その後の食事のときの、少年事件を手がける清水さんの真摯な思いに、
思わず、涙ぐんでしまったわたしです。

ちょっと日がたってしまったのですが、紹介します。
『いったい誰を幸せにする捜査なのですか。』の清水勉弁護士の解説ともに、
ぜひ、読んでもらいたい記事です。
  
奈良・田原本町の放火殺人:調書漏えい事件 草薙厚子さんに聞く  

 ◆「鑑定医の無罪、訴えていく」
 奈良県で母子3人が死亡した放火殺人事件を題材にした「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の出版から21日で1年。長男(18)を精神鑑定した崎浜盛三医師(50)が秘密漏示罪で逮捕・起訴された。著者の草薙厚子さんは毎日新聞のインタビューに初めて応じ、崎浜被告の無罪を訴えていく考えを明らかにした。【高瀬浩平、阿部亮介、臺宏士】

 ◆強制捜査は青天の霹靂 公権力の介入は、あってはならない。

 --出版から1年がたちます。

 ◇奈良地検の秘密漏示容疑による強制捜査は青天の霹靂(へきれき)だった。法務省が昨年7月に私と講談社に対して人権侵害だとした勧告も驚きだった。毎日新聞記者が国家公務員法違反に問われた沖縄密約事件は日米間の密約が問題とされたが、秘密といっても、今回は家庭内の問題だ。奈良地検を含めて法務省が調査や捜査に乗り出すべきことなのか、そもそも疑問だ。こうした公権力による介入は、ジャーナリズム活動に対して絶対にあってはならない。
 --長男を精神鑑定した崎浜医師が秘密漏示罪で逮捕・起訴されましたが、彼が取材源なのですか。

 ◇取材源については明らかにできないが、本が出たことで情報源だとして逮捕された崎浜さんや、自宅を強制捜査された京大教授には本当に申し訳ない気持ちだ。崎浜さんが逮捕された時は、他人のことで初めて死のうと思った。検察が狙った社会への萎縮(いしゅく)効果は崎浜さんが無罪になることで阻止できる。証言を求められれば裁判で訴えたい。

 --なぜ地検は強制捜査までしたのでしょうか。
 ◇私が狙われたのだと思う。本は、相次ぐ少年事件を防ぐために出したが、神戸の児童連続殺傷事件を取り上げた「少年A矯正2500日全記録」(04年)を出した後から、法務省内には不十分な矯正教育など少年事件の真相や背景を追及する取材活動を面白く思っていない人たちがいたようだ。「目の上のたんこぶ」と考えていたらしく、出版前から内偵していたと関係者から聞いた。

 --捜査官が作成する供述調書を直接大量に引用することに批判が出ました。
 ◇調書には昔から懐疑的だ。著書での引用は、長男の成育歴や放火に追い詰められるまでの行動など曲げることができない事実を選んで使った。例えば、「母親が嫌いだから殺意を抱いた」と言わせようと捜査官が誘導している部分は排除している。調書の使い方が問題だという批判は当たらない。本の内容から情報源が特定されることはありえない。ただ、大量の引用が公権力の介入を招く要因になったことは認識が甘かったと認めざるを得ない。

 --著書の記述で後悔していることはありますか。
 ◇出版目的だった長男が患っている広汎性発達障害について書き切れなかったことだ。編集者から「一般の人が分かるだろうか」と言われ、客観的な事実関係を中心にして興味を持ってもらおうということになり私の本意とずれてしまった。その部分を補足した形で改訂版を出したい。

 --調書を見せてもらった情報源と問題意識を共にするなど信頼関係はあったと思いますか。
 ◇長男が広汎性発達障害だったことを社会に広く知ってもらいたいという目的意識は一緒だったし、今も同じだと思いたい。

 ◆合意めぐる認識で対立--講談社・取材側と第三者調査委
 「僕はパパを殺すことに決めた」の出版経緯などを検証する講談社の第三者による調査委員会(委員長・奥平康弘東京大名誉教授)は4月9日に報告書を公表した。
 委員会は、報告書の中で、著者の草薙厚子さんや取材チームと、自宅に放火した長男を精神鑑定した崎浜盛三医師との間で供述調書の取り扱いについて、(1)コピー禁止(2)直接引用禁止(3)原稿の事前確認--の3点について「合意が存在した」と認定した。
 草薙さんらは、崎浜医師が不在の京都市の自宅で、デジタルカメラで無断で調書を撮影。著作では、調書からの直接引用を多用し、事前に原稿のチェックを求めず、単行本化も明確に告げないまま出版した。この点について、委員会は、「取材源との約束に反した重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」と指摘した。
 委員会は直接引用に関して「比較的に容易に取材源を探り出せるような表現方法をとってしまったことは弁解の余地がない」とし、取材源秘匿についても「入手ルートを特定されることが容易であるという想像力が決定的に欠如していた」と断じた。
 報告書によると、草薙さんは単行本の出版に先立ち「週刊現代」に2回、「月刊現代」に1回の計3回、事件についての記事を執筆しているが、その際は(2)と(3)の約束を守ったため問題は表面化しなかったという。
 草薙さんは4月21日に会見し、3点の約束についての合意はなかったとし、「酒席での言葉尻をとらえての事実認定だ」と批判した。講談社も「明示的な約束があったとは認識していなかった」との反論を公表している。

 ◆鑑定医「後悔ない」
 一方、毎日新聞の取材に対し崎浜医師は「長男は広汎性発達障害で、殺意がなかったことを広く社会に訴えたかった。草薙さんに供述調書を見せたことは後悔していない」と語っている。

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 ◆「僕はパパを殺すことに決めた」の重版中止、ネットで売買
 「僕はパパを殺すことに決めた」は6月18日までに4刷(約3万2000部)を重ねた。7月12日に東京法務局が草薙さんと講談社に人権侵犯に当たるとして関係者に謝罪を求める勧告を出した後、重版を取りやめた。
 奈良地検は9月14日に草薙さん宅などの強制捜査に着手。4日後の18日に講談社は出庫停止を決めた。同社広報室は「約3万部は売れたと思うが、残りの約2000部は社内にある」と話す。
 インターネットのオークションサイトでは、単行本が手に入りにくいという状況も手伝ってか、現在も入札額の設定が1万9800円となっており、高値で売買されているようだ。単行本の価格が1500円のため、10倍以上の値がつくケースも多いとみられる。
 更に単行本の取り扱いを巡り、全国の図書館で対応が分かれた。京都府亀岡市立図書館中央館は東京法務局の勧告が出てから、閲覧や貸し出しの中止措置を決め、中止は現在も継続中だ。山形県上山市立図書館では強制捜査後に貸し出しと閲覧を禁止した。片桐繁雄館長は「内容が個人や家庭を題材としたもので、人権が侵害されていると判断した」と理由を述べる。
 一方、閲覧・貸し出しの中止を撤回したのは、松江市立図書館だ。強制捜査後に中止措置としたが、著者の草薙さんが起訴されなかったため、捜査が終結した11月初旬から措置を解除した。大西高志副館長は「著者が逮捕される事態にならず、読みたいというリクエストも多かった」と話す。
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(2008.5.19 毎日新聞)


今日は、東京から知り合いのジャーナリストが
連れ合いの取材にいらっしゃったのですが、
その話がおもしろくて、つい引き込まれてしまい、
その後、買ってきたばかりの『シズコさん』(佐野洋子著/新潮社)を
ボロボロ泣きながら読んでいたので、こんな時間になってしまいました。

最近は、ブログのアップが夜になることが多く、
なんとか朝型に切り替えないと、と思っています。

取材の話と、本のことは、また書きます。
では、明日朝お会いしましょう。


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コメント (1)
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