みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

近藤氏への回答/堺「特定図書排除」事件の記事の続き(『む・しの音通信』68号)

2008-12-10 20:09:34 | 「ジェンダー図書排除」事件
12月2日に、福井・焚書坑儒事件で「図書を排除せよ」といっていた
     張本人の近藤實氏から、
配達記録つきのお手紙が届きました。

と書きましたが、封筒を空けたら、「原告団」事務局のわたしあての
「公開質問状」が入っていました。

「公開質問状」なので、住所、連絡先を公開することも了解の上と思いますが、
一応、個人情報なので黒塗りしておきます。
(これだけでも、けっこう手間がかかるもんですね)



内容と趣旨は、
「ジェンダー図書排除」究明原告団は存在するのか?と、
名前から福井が取れたことへの説明を求めています。

一方的に送りつけられてきた内容は事実無根の誹謗中傷としか思えず、
添付の資料には原告団事務局としてわたしの名前は出ていないし??、
不愉快であほらしくして、近藤氏の妄想に付き合う気も起きずに
今日まで、ほってありました。

お返事する義理もありませんし、無視することはできますが、
今日が回答期日で、いちおう「公開質問状」と書いてありますから、
以下の「回答」を、一度限り、公開でお返事します。

        近藤實氏への回答
1)「ジェンダー図書排除」究明原告団は、代理人に
  清水勉弁護士を立てて、情報非公開取消訴訟を継続中で、
  実在する市民団体である。
2)福井事件以来、各地で図書排除事件が起きているので、
  堺事件で監査請求を提起した時点から、協議して
  「福井」に限定しない名称に変更した。
3)以上が事実なので、近藤氏に対して、「原告団は存在しない」
  とweb上で事実無根の誹謗中傷を繰り返していることへの、
  訂正と謝罪を求める。              以上   
            2008年12月10日 寺町みどり

 
わたしたちのところには、過去にも、産廃の運動や県相手の既得権の関係で、
嫌がらせの手紙や、家族に危害を加えるとの脅迫文書が届いたこともあり、
都度、警察に被害届けを出してきました。
御嵩町の産廃事件では、自宅に県警が監視モニターをつけていたこともあります。

近藤氏は実名を挙げて、web上でわたしたちに対し、
悪意による事実無根の誹謗中傷を繰り返していますから、
公開で警告しておきます。

近藤實さんへ
今後は、寺町みどりへの一切のアクセスを拒否します。
あなたからの不愉快な嫌がらせの証拠も保存してありますから、
今後このようなことがありましたら、即、被害届等の法的措置をとります。


掲示板等での誹謗中傷(内閣府)

なっとく法律相談「掲示板に誹謗中傷の書き込みが!管理者の責任は?


人気ブログランキング(社会・経済)に参加中 
応援クリックしてね
 


関連で(になるか分かりませんが)

『む・しの音通信』68号の堺「特定図書排除」事件の特集のつづきです。

堺市立図書館「特定図書」排除事件
「やめとき」ではなく「やめとかない」精神で
                 フェミニストカウンセリング堺・加藤伊都子


 職住ともに堺市民の加藤です。9月21日、「堺市図書館の書架から5499冊の図書が消えた!」という寺町みどりさんのML投稿で今回のできごとを知りました。その投稿には「わたしたちといっしょに行動したいという堺市在住の方は、ご連絡ください。」とありました。とりあえず、「本の名前だけでも教えてもらおう」とみどりさんに連絡を取り電話で話をしました。それが9月27日。そのときの話で、まずは監査請求をする堺市在住の市民が必要だということで、結局は自分がなるのですが、監査請求人として名前を出してくれる人を探し始めました。
 なぜ、名前を出してくれる人を探したかと言うと、この件について相談した中の数人から「やめとき」と言われたからです。「監査請求人になってもいいけど、名前を出すのはやめとき」と。理由は、仕事にさわる、仕事仲間に迷惑がかかると。(仕事はバックラッシュの人々が大嫌いなフェミニストカウンセラー。彼らの言によると、国家転覆、家族破壊を企んでいるということになるのですが、DV被害者、セクハラ被害者の支援もしています。) 
 忠告を受け、「誰かいないかな」と探し始めたのですが、誰も引き受けてくれない。今にして思えば「私はしないけど、あなたがやって」ということなど誰も引き受けないのは当然のことでした。そのうちに、説明をしたり、頼んだりするのが面倒くさくなってきました。まず図書館への攻撃の意味が言葉を尽くさなくてもわかり、できれば福井や松山で起こったことを知っていて、BL(ボーイスラブ)、少なくとも「やおい」くらいはわかる人、となると、そうはいない上に、同じ堺市民になぜ私が頼まなければならず、しかも断られなければならないのか、自分がやったほうがよっぽど簡単だと思い始めたのです。
 そこで改めて、「やめとき」という言葉について考えました。最初に思いついたのは、私たちが大事にしたい人は図書館攻撃をしている人々と意見を同じくする人たちではないということでした(何て当たり前のことを、と書きながら思います)。私たちを支えてくれているのも、仕事をくれているのも、その人たちではない。そして私たちとつながっている人は、図書館への攻撃を放置してもいいとは思わないだろうということでした。でも自分がやるとなると話はまた別で、「誰かがやるならお手伝いはします」と。この辺が正直なところなのだろうと思います。実際に、私たちが「やります」となってからは、短い期間、仕事をしながらにもかかわらず、賛同人等はそれほど苦労せずに集められました。
 そしてもう一つ考えたのが「仕事にさわる」というほどに彼らは厄介な存在なのか、ということです。確かに図書館にとっては厄介な存在になっていますが、さきほども書いたように、彼らは私たちの顧客ではない。「フェミニストの陰謀」などという言葉には「ンな大げさな」と思いますし、ネット上での執拗さには辟易しますが、それと力があるということは別です。「やめとき」という忠告を受け入れて、彼らの主張を放置すれば、あたかも彼らに力があるかのように見えてしまいます。たとえばネット上には「抗議のビラを図書館前で手分けしてまいた」とありますが、実際にはビラはまかれていません。声をあげ、話し合い、情報交換をしなければ、ネット上に書かれたビラまきは事実になってしまいます。そしてそんなに人数がいるのか、そんなに行動力があるのかと、ますます「やめとき」と言う人がふえることになります。この「やめとき」につながる心性、トラブルを避ける心性が今回の事態を招いたひとつの要因ではなかったかと思います。
 こういうやり方に対抗できるのは、「やめとき」ではなく、みどりさんたちのやり方、「やめとかない」(変な日本語ですが)精神と「すべてを明るみに」精神で行くしかないと、改めて思います。現在、私たちは「『ジェンダー図書排除』究明原告団」の方々のもと、「やめとかない」精神と「すべてを明るみに」精神とを学習中です。
=====================================================================
特定図書排除問題に対し、私が行動する理由
                木津川市・呉羽まゆみ


 「『ジェンダー図書排除』究明原告団」の1人である私が、堺市の出来事を最初に聞いたのは、9月5日だった。その内容は、「BL(ボーイズラブ)関連書籍が開架を中止し書架に移され、処分される予定」というもので、「冊数5499冊、購入金額366万8883円」(市のホームページ「市民の声」)ということであった。一報を聞いて、最初に私が感じたことは、「福井県、北海道に続いて今度は堺か、今回は女性センターではなく図書館が狙われたか、しかも青少年にとって悪影響を与えるのでともっともらしい理由がつけやすい本を指定しているのはなんとも巧妙な」、そんなところだった。私は、今回話題になっているBL本の存在を知らなかったし、今も読んでいない。それゆえ、今回の事件(あえて事件と呼びたい)の本質がかえって鮮明にわかるように思う。
 そもそも図書館とは、国民の知る自由を守り、広げていくことを責務として、あらゆる資料の要求に答えるべく、みずからの責任において作成した収集方針に基づいて資料を収集し、提供する自由を有する。その際、個人・組織・団体からの圧力や干渉に屈してはならないと「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会・1954採択)にうたわれている。堺市図書館に対して私が直感的に感じた疑問は、「BL本がなぜそんなに多くあったのか」ではなく「なぜそんなに急に処分が決まったのか」であり、個人もしくは団体の圧力に屈し、混乱したと思われる図書館の姿勢に対するものであった。
 後日、バックラッシュ側の掲示板で知ったのであるが、匿名市民本人が書き込んだと思われる書き込みに、「市議会議員さんに、このBLの一件を伝えた」「その議員さんが動いてくれ」「市会議員さんからも、結果について連絡があり~BLを書庫へ収納するとのこと」などの記述を見るにつけ、私の中での疑問はゆるぎないものとなった。つまり、議員の圧力・介入の存在を確信したと同時に、Webを通して煽動するこのような手法を私の感覚は受け入れられないと、自分の疑問点の整理ができたのである。
 議員が、執行機関である行政に議会以外で意見を言ったり質問したりすることはある。その際、受け取る側が「堺市立図書館資料収集方針」に基づき対応したなら、問題は拡大しなかったはずである。しかしながら、今回は、最初は匿名市民(市民かどうかは不明)からの電話で始まったものの、議員への働きかけ、議員の行動に対して、堺市の対応が個人や議員の圧力に混乱したといえる。その後、Web上でこれらの経過や報告が一種煽動的に扱われ、組織的な図書排除運動が展開されていることが明らかとなるにつれ、図書館本来のあり方が問われる問題に発展しているにもかかわらず、堺市の意識は希薄とさえ感じた。もし、我がまちで起こったらと考えると、これはほってはおけないとの思い、他市のことであっても問題が明らかになった以上、議員という立場でできることをしたいとの思いでいた。
 この件に関して、不当な公金の処分の差し止めを求めた「住民監査請求」の提起とは別に、何かできることをということで、「原告団」事務局のみどりさんたちと相談をして、堺市長・教育長に「堺市立図書館における特定図書排除に関する申し入れ」をすることになった。第1次申し入れ人は、41人の議員(元・前職含む)と2団体。自分の自治体でもいつ起こるかわからない問題について、図書館の責務を整理し、考えた人たちによる一致した行動であった。議員による、個人や議員の外圧にうろたえ今まさに市民の知る権利が押しやられようとしていることに対する抗議、福井事件も今回の事件も、相手側の目的はジェンダーバッシングであると感じるから、反動勢力の好き放題にはさせない、そんな思いでの行動であった。
その後第2次を追加し、第1次と合わせた申し入れ人の合計は、市民97名・議員46名・7団体に。代表の上野千鶴子さん(東京大学大学院教授)に届いた堺市教育長の回答は、「廃棄が前提の処置ではない」と明記されており、ひとまず安心?かな。
(『む・しの音通信』68号)



写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを 
 明日もまた見に来てね
  


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堺市立図書館で「特定図書排除」事件はなぜ起きたのか?(寺町みどり)

2008-12-10 00:04:11 | 「ジェンダー図書排除」事件
堺市に、11月4日に提出した「特定図書排除に関する住民監査請求書」の
陳述に行って、9時ごろ帰ってきました。

陳述の報告はあらためて書くとして、12月5日に発行した『む・しの音通信』の
「図書排除事件特集」に、わたしも原告団の事務局として、
「堺市立図書館で「特定図書排除」事件はなぜ起きたのか?」という、
約4500字のまとまった記事を、経過報告がてら書きました。

人気ブログランキング(社会・経済)に参加中 
応援クリックしてね
 


「陳述」の補充書にも、情報公開された資料とともにつけました。
ちよっと長いのですが、関心のある方は読んでいただければうれしいです。

堺市立図書館で「特定図書排除」事件はなぜ起きたのか?
          「ジェンダー図書排除」究明原告団 事務局・寺町みどり


 今年8月、堺市の全市の図書館の書架から5499冊のBL(ボーイズラブ)図書が、いっせいに書庫(閉架)に移されるという、衝撃的な事件が起きた。ここにいたる経過のなかでは市議会議員の関与などもあった。経緯は福井県の生活学習館での「ジェンダー図書排除」事件と酷似している。これまで女性センターで類似の事件はあったが、今回はじめて公立図書館で事件が起きたことにショックを受け、この問題について調べはじめた。

◆堺市「特定図書排除」事件の経過

 事件の発端は、7月下旬に匿名の市民A(男性)が「BL本が大量に図書館にある」と市内の図書館に苦情の電話をかけたこと。わたしは、福井事件以来、バックラッシュ派のインターネット「掲示板」を監視していて、この匿名市民の投稿に気づいた。どこかのまちの図書館で図書排除の動きが起きていると心配だったが、具体的にどこかが分からなかった。
 9月になり、市民Aが「掲示板」に堺市HP「市民の声Q&A」をアップしたので、堺市立図書館を舞台に起きた事件と分かった。 
事実関係を特定するために堺市に対し、原告団14人で、図書リストと会議記録等、「関連する公文書のすべて」を情報公開請求した。数日後に図書リストは資料提供され、公開された公文書や職員への聴き取りなどにより事件の全容が明らかになってきた。
 堺市HP「市民の声Q&A」(市の考え方)には、「(BL図書は)すみやかに書庫入れにいたしました。今後は、収集および保存、青少年への提供を行わないことといたします」と書かれているが、このような重大な決定をしたというのに、かんじんの意思決定に至る議論や経過は記録に残っていない。
 市民Aから堺市に届いた複数のメールや電話により、BL図書は7月下旬から8月上旬の間に異例の全館調査によって、開架から一斉に撤去されたようだ。このようなクレームだけで公立図書館が大量の図書を右から左へ動かし、処分まで考えるなんて、とても信じられない。
 公文書には議員の関与が記されており、「掲示板」でも、市民Aが「政治家の介入の効果」や「図書館から処分することの回答を得た」ことを明言している。図書館の対応も議員が介入してから明らかに変化している。福井「ジェンダー図書排除」事件で、図書排除を迫ったK氏が「政治家の力で図書が撤去できた」といっているのと同じ構図だ。このころは9月議会を控えている時期だったので、議会で追及されることを恐れて、あわてて対応したということはじゅうぶん考えられる。 

◆「住民監査請求書」提出へ

 調査をすすめていたわたしたちは、事実関係を踏まえ、「図書の種類・内容いかんに関わらず、図書の処分・廃棄をさせてはいけない」という観点から「住民監査請求」をすることにした。請求者は堺市の「住民」しかなれないが、原告団の有志が代理人となって、寺町知正さんが監査請求書の原案を作り、知り合いを通じて呼びかけるなど準備を始めた。
 10月19日、堺市の皆さんと住民監査請求の打ち合わせをするために堺市へ行き、翌日、堺市中央図書館を訪問して今回の事件の経過などを聞き、地下の書架に保管されている図書をじっさいに見せてもらった。
 堺市立図書館には、「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会/1979年改定)を基にしたすぐれた「資料収集方針」「資料除籍基準」等がある。特定図書を排除する行為は、これら規定に違反するのはもちろん、表現の自由、知る権利、基本的人権を侵害し、かつ禁止された検閲であって「日本国憲法」に違反している。同時に、「青少年に提供しない」は、「図書館法」「子どもの権利条約」「堺市男女平等社会の形成の推進に関する条例」にも反している。
 堺市民28人と代理人12人(代表・上野千鶴子)は11月4日、堺市監査委員に「特定図書排除に関する住民監査請求書」を提出した。この「監査請求」の提起が、同時に、堺市でおきている「図書排除」事件の公表となるので、記者会見では、代理人代表の上野千鶴子さんのコメント(資料1)も発表した。「住民監査請求」については「12月9日に監査委員に対し陳述をする」と決定している。

◆「申し入れ書」を提出
 
 続いて、原告団のメンバーが呼びかけ人になり、11月7日、堺市長および教育長あての「堺市立図書館における特定図書排除に関する申し入れ書」(資料2)を提出した。申し入れは、呉羽真弓さんはじめ市民派議員41名(元・前職を含む)と「む・しネット」と「原告団」の連名。提出後、佃芳治教育次長、河野俊英中央図書館長などと面談し、市の考え方を文書で回答するとの了解を得た。
 堺市側の説明は、「5499冊は有害図書ではない」「図書館は収集基準にかなった本を入れており過激なものは購入しない方針」「現時点で除籍基準に該当するものはない」「議員から圧力があったと思っていない。議員の介入があろうとも、基準に従って粛々と仕事を進めるという図書館の姿勢は変わらない」など。 
 第一次申し入れは、緊急に市民派議員で提出したが、さらに広い範囲のひとたちに、「第二次申し入れ」を呼びかけることにした。
 11月14日、上野千鶴子さんを筆頭とする「市民97名/議員5名/5団体」で、「(第二次)特定図書排除に関する申し入れ書」を提出。申し入れ人の合計は、「市民97名/議員46名/7団体」になった。
 11月14日、堺市教育長から申し入れに対する回答が届いた。回答は「本件における、他者からの個人的主張による不当な介入や働きかけなどは一切ありません。・・・収集図書のうち、表紙、挿し絵、イラスト等で特に過激な性的描写等のある図書については、青少年に配慮する観点から、開架せず書庫に収蔵し、請求があった場合には、閲覧・貸出しに対応しています。」 これでは答えにもなっておらず、納得できないわたしたちは、「堺市回答に対するコメント」(資料3)を公表した。

◆ボーイズラブはなぜ排除されたのか?
 
 当初、「(BL図書は)青少年に提供しない」とされていたが、回答の直前に、意思統一のための館長会議が開催され、申し入れにより、この決定は見直されたようだ。
 とはいえ、「BL図書は収集・保存しない」という措置は見直されていないし、堺市はなぜ不当な要求に従ってBL図書を特定し排除したのか、の疑問は残る。
図書館側は、「BL図書をカウントするために動かしただけ」と言っているが、「一般書として混配」していた館もあるのだから、「一般図書として開架しているのでカウントできない」と答えれば済むはなしだ。
 堺市立図書館は、以前から「やおい小説の取扱い基準」を作っている。その基準により「指摘されたので閉架に統一した」ということだが、図書館のすべての図書は、「資料収集方針」によって購入・配架されており、除籍・保存基準により廃棄・保存される。「有害図書」や「過激な図書」は、入り口でチェックされて入りようがない。これらの規定が図書館の唯一の正規ルールなら、あえて「ボーイズラブ」と「区別」しての制限はなぜ必要なのか。
 「表紙、挿し絵等で特に過激な性的描写等のある図書」というが、どの図書館も探せば「セックスと暴力」にあふれている。「BL小説」は異性愛の小説とどこがどう違うのか、 そもそも、「BL図書」ってなんなのか。「BL」は誰にとって有害なのか、「BL」を女こどもに読ませたくないのは誰なのか。「BL」=「過激な性的描写のある本」なのか、「過激」の線引きをどこでしたのか、5499冊をどのような基準で選んだのか、など次々に疑問がわいてきた。
 「BL(ボーイズラブ)」と特定された図書リストは、約1000枚の紙版と電磁的データ(FD)として、9月中旬にわたしの手元に届いていた。今回の問題は、特定された図書が「BL」であることと、その冊数の多さゆえに、その後、マスコミやネットで議論され、話題が大きくなった。
 わたしたちは、この2か月ほど、「図書の廃棄をくいとめる」活動をしてきたが、平行して図書リストを詳しい人たちに見てもらっていた。先日、著者別、出版社別に「分類したデータ」が届いたが、この分析をみれば、いかに図書が、ランダム、無節操、不統一な方向で選別されたかがうかがえる。
 図書データの分析を進めている研究者によると、「司書の目についたもので、『BL』に見えたものをリストにあげるといった作業だったのではないか。統一した作業ではなく、個々の作業した司書が、それぞれ違う個人的な基準で本を選んだということなのかもしれないという気もしてきた」ということだ。
 この推測は当たっていると思う。今まで図書館の資料は、各図書館の独自の判断で排列されていたものを、今回はじめて全館調査をおこない統一した。その基準は何かといえば、じつは何もなかったのだ。意思統一や特定図書を排除するための会議をした気配すらない。「表紙と挿絵」というのも、あとづけの理由に過ぎず、「BLらしきもの」をとりあえず排除したのではないか、とわたしも公文書を精査・分析しながら、同じことを考えていた。

◆「特定図書排除」事件はなぜ起きたのか?
 
 堺市に届いたメールから分かったことは、特定図書を排除したい人たちは、「同性愛」自体を嫌悪している。同性愛への差別と偏見から「BLをこどもに見せるな」といい、「BL本を処分せよ」と迫った。その要求にしたがった図書館にも、「ボーイズラブは青少年に見せてはいけない」という予断と、セクシュアルマイノリティへの偏見があったのだろう。 だからこそ、堺市立図書館で起きたことは、「ジェンダー図書排除」事件にほかならない。
 この問題で行動することを呼びかけたら、「デリケートな問題だから触れないほうがよい」とか、BLを擁護することをタブー視する声があった。「寝た子を起こすな」と。
 巷にあふれる「BL本」の悪いイメージをことさらに振りまいて、自己規制を迫るのは、差別する側の常套手段だ。どんな本も読者に読まれるために書かれている。わたしは、図書を選別し、区別し、隠すことこそが「焚書」であり、「差別」につながると言いたい。
 特定図書は現在、7図書館で「保2」というところに移動・保管され、引き続き「調査中」。報道によると「専門司書70名が本の内容を一冊一冊丁寧に確認し、選定を行っている」。特定された図書は「文字情報」の小説である。問題になっているのは「表紙、挿絵、イラスト等」とされたようだが、特定図書をさらに選別する行為は、図書館の裁量を超えていると思う。「BL図書」は、「間違って排除された」のではなく、図書館の自己規制によって、区別され、市民の目から排除されている。「どのような理由であろうと蔵書を排除しない」を基本原則としない限り、第二第三の「図書排除」事件は、起きるだろう。
 「図書館の自由に関する宣言」は、「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする」とし、「第1 図書館は資料収集の自由を有する。 第2 図書館は資料提供の自由を有する。 第3 図書館は利用者の秘密を守る。 第4 図書館はすべての検閲に反対する。図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまでも自由を守る。」と掲げている。  
 現場の図書館は、「図書館の自由」を守るために毅然としてたたかってほしい。
 堺市に対しては、現在、第三次情報公開請求中。公開期日は12月5日。新たな公文書が出てくれば、なぜこのようなことが起きたのかなどについて、さらに解明が進むはずだ。
 今回の図書排除事件は、わたしたち自身の「戸惑い」と「偏見」に対し、大きな問いを突きつける。あなたはどこに立つのか、と。
 わたしもまた、「ジェンダー図書排除」事件にかかわる当事者として、この問題から目をそらさずに、考え、行動していきたい。

・・・・・・・・(字数の関係で資料は省略します)・・・・・・・・・・・・・・・・

(『む・しの音通信』68号)



写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを 
 明日もまた見に来てね
  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする