痛快な本です。説明はいらないと思います。
「できそこないの男ってどういうこと??」って思う人は、
まず読んでみてください。
『できそこないの男たち』
(福岡伸一/光文社/2008/10/17)
<生命の基本仕様>----それは女である。
本来、すべての生物はまずメスとして発生する。
メスは太くて強い縦糸であり、オスは、メスの系譜を時々橋渡しし、
細い横糸の役割を果たす「使い走り」に過ぎない----。
分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。
SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと
駆け引きの息吹を伝えながら
≪女と男≫の≪本当の関係≫に迫る、あざやかな考察。
目 次
プロローグ
第 一 章 見えないものを見た男
第 二 章 男の秘密を覗いた女
第 三 章 匂いのない匂い
第 四 章 誤認逮捕
第 五 章 SRY遺伝子
第 六 章 ミュラー博士とウォルフ博士
第 七 章 アリマキ的人生
第 八 章 弱きもの、汝の名は男なり
第 九 章 Yの旅路
第 十 章 ハーバードの星
第 十一 章 余剰の起源
エピローグ
生物と無生物のあいだ
(福岡伸一/講談社現代新書)
もとってもおもしろいです。
(2007-08-21)至福の読書/『米原万里の「愛の法則」』
『ぼくには数字が風景に見える』『生物と無生物のあいだ』
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『できそこないの男たち』の書評です。
(2008.12.21 岐阜新聞)
しょせん、オスは使い走り~『できそこないの男たち』 福岡伸一著(評:後藤次美) 光文社新書、820円(税別) nikkeibp 2008年12月15日 月曜日 後藤 次美 小学生のころ、「まんがはじめて物語」というテレビ番組をよく見ていた。 モグタンというキャラクターとお姉さんとが、タイムスリップをして、身近な物事の起源や歴史を物語風に解説してゆく。実写とアニメを両用していたのが特徴的だった。 昨年、『生物と無生物のあいだ』でベストセラーをかっ飛ばした福岡伸一の新著『できそこないの男たち』は、どこか「まんがはじめて物語」と似ている。というのも、生物学的な男の作られ方を解き明かす本書もまた読者を次々と「はじめて」の場所へと連れていってくれるからだ。 本書はまず、1988年のコロラド州カッパーマウンテンで開催された、アメリカ実験生物学連合会(FASEB)の研究会の1シーンから幕を開ける。上司が主催者だったおかげで、福岡伸一もその場所に同席する幸運に恵まれた。 〈司会者が次の演者の発表をアナウンスすると会場は水を打ったように静かになった。私は発表者がどこから現われるのかと目を泳がせていた。名前は知っているが、どんな人物なのかはわからない彼をいち早くとらえようと〉 その男の名前は、デイビッド・ペイジ。彼はそこで「人類史上最も重要な発見について発表しようとしている」のだが、その発表の中身はまだ明らかにされない。 〈人は男に生まれるのではない。男になるのだ。でも一体どうやって? それがペイジの最も知りたい問いだった。そして1988年夏、その答えに最も近づいていたのが彼だった〉 という寸止めの表現でプロローグは締めくくられる。 ずるい。こんな切り出し方をされたら、読者はその先が知りたくなる。ところが、再びペイジの話が始まるのは、86頁からだ。 その間に本書は、精子を最初に「見た」男や、性決定の遺伝メカニズムをはじめて解き明かした女のもとへ読者を誘っていく。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (日経BP 2008.12.19) |
わたしたちおんなはむすめをうむ
だれのちからもかりずに
むすめはせいちょうし
うつくしいおんなになる わたしそっくりの
このようにしてわたしたちおんなはいのちをつむいでいた
ずっとずっと
ながいあいだ
このようにしてわたしたちおんなはへいおんにすごしてきた
ずっとずっと
ながいあいだ
あるあさ
うみべで
ララとナナはあそんでいた
ララは海の色も空の色もおよばないまっすぐな青
ナナは花の色も蝶の色もおよばないあざやかな黄金色
ララはかたわらのナナのからだをこっそり見ていた
流れるような髪
深いひとみ
磨かれたレンズのような頬
たわわな果実のような重く豊かな胸
ジガバチのような腰
胸と競い合うように張り出した腰
人魚の下半身のように伸びた足
ふと
ララは思った
わたしの青とナナの黄金色がまざるとどんな色になるの
それはいままで誰もかんがえたことのなかったことだった
ララはひとりになると
そっと自分のあばら骨の一部を抜き取り
そのあとを肉でふさいだ
あばら骨はほんらいララの娘のもとになる部分だった
ララは娘のもとから茎を引き出し
割れ目を縫い合わせた
そのようにしてララはキラルを造り上げた
キラルは
はじめは死んでいるようにじっとしていた
やがてキラルはその細い手足を震わせるようにうごかしはじめた
耳をすませるとキラルのか細い呼吸が聞こえた
ララはキラルを大事に育てた
キラルはありあわせのものからいそいで造られたため
小さく
華奢で
脆かった
それでもキラルはすこしづつ成長した
ある日
ララは
キラルをナナのところへ行かせた
ナナはキラルを誰もいないは序に導きそっと身体を重ねた
キラルが運んだものはそう
ララの青色の種だった
こうしてナナはむすめキキを生んだ
キキはこれまで誰も見たことがない色をしていた
ララの青とナナの黄金色がまざってできたすばらしい色
誰もがキキをうらやんだ
ララはキラルの作り方をみんなにおしえた
ありとあらゆる素敵な色がうまれた
そんなある日
空から燃える石が降り注いだ
火は大地を焼き尽くした
そのあと空気が冷え始めた続く何年もの間
太陽は姿を隠し
海は凍りついた
原色のものが消え
やがてララもナナもいなくなった
キキたちの世代は新しい色と寒さに耐える身体を手に入れることができた
かわりに
キラルの手を借りないと子どもをつくることができなくなった
色どりが増えた分 世の中が複雑になった
キラルたちはせっせとそれぞれのママの色を別の娘のもとに運びつづけた
色を運び色を混ぜること
それがキラルのできるただひとつの仕事だったから
仕事が終わるとキラルは荒地に捨てられた
もともとキラルは小さくきゃしゃでもろかった
どのみちそんなに長くは生きられなかった
太陽がもどり 空気は暖かくなり始めた
大地には花が咲き
海は穏やかな波をとりもどした
このようにしてわたしたちおんなはいのちをつむいできた
ずっとずっと
ながいあいだ
おそらくわたしたちはすこし油断していたのだろう
あるいは平和ゆえに慢心しすぎたのかもしれない
最初は気づかなかったが
徐々にキラルの数が増えはじめた
なぜならすべての女が
色を運んできたキラルをそのまま住まいにとどめ
次々と色以外のものを運ばせはじめたから
はじめは薪を
ついで食糧を
しまいには慰撫までを運ばせた
キラルには知恵があった
薪も
食糧も
そして慰撫までも
余分につくりだすことができた
キラルはそれをこっそり隠しておいた
このようにしてキラルは
自らのフェノタイプを
限られた遺伝子の外側へと延長する方法を知ったのだった。
(原詩 Chiral and the chirality,by Iris Otto Feigns)
女たちのものがたりは、現代につづきます。
『クロワッサン』新年特大号は、
「女が生きるヒント~23人の素晴らしい女性が話します。」
『クロワッサン』特大号1/10
「女が生きるヒント」
P52~53は上野千鶴子さんの、
「まだ日本は男社会!?
女が自分らしく生きるには。」
元気のでる、個性的なおんなたち23人の語りです。
2009年をおんなが自由に生きられる年にしたい。
最後まで読んでくださってありがとう
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