一人は日本人として生まれ、皇太子と結婚したために、
国籍がなくなり、基本的人権も奪われている雅子さん。
『プリンセス・マサコ』には彼女が人間としてまっとうに生きる権利さえ奪われ
「男子の跡取りを生む」ことのみを強いられていることが克明に記されている。
「加害者は私たち日本人すべてである」の言葉に胸をつかれる思いだ。
『無国籍』の著者・陳天璽(チンテンジ)さんは、
中華民国国籍が日本政府に認められなくなったある日「無国籍」となった。
わたしの友人は戦前に「日本人」と結婚し、彼が「在日朝鮮人」だったために、
敗戦後、「無国籍」となった。
友人のフィリピン女性の子どもは、いっしょに暮らしていた日本人男性に
生前認知されなかったために「無国籍」である。
他の国の夫婦が子どもを日本で出産すると、日本は「血統主義」をとっているために、
日本国籍は与えられず、親の本国は「出生地主義」をとっているために、
無事本国に届け出ができなければ実質的な『無国籍」となる。
沖縄では、1985年の改正国籍法の規定により、それ以前に、
アメリカ人と結婚した女性から生まれた子は、どこの国籍も取得できずに
「無国籍」となった。アメリカ人を父とする事実上の「無国籍児」も多い。
日本では、それら「無国籍」の人たちは、いまだ見えない存在にされ
日本社会から、異質なものとして排除され続けている。
子どものころから、「さまざまな異質な他者」を差別し排除する
日本という国に違和感を持ち続けているわたしは、
「くに」ってなんだ?「愛国心」ってなんだ?と問い続けている。
、
そんな日本で、来日するすべての「外国人」に対して、
昨日から、あからさまな差別と人権侵害が始まった。
80年代に「指紋押捺拒否運動」にかかわり、在日コリアンの人たちの
「ひと差し指の自由」を守るためにともに闘い、ふじゅうぶんではあるけれど、
指紋押捺廃止を勝ち取ったわたしとしては、この制度はとうてい容認できない。
【関連】『安全に必要』歓迎の声 新入国審査 テロ抑止効果疑問視 2007年11月20日 東京新聞夕刊 入国する外国人の指紋採取や顔写真撮影を義務付ける改正入管難民法が施行された二十日、成田空港で新システムによる入国審査が始まった。審査時間が長引いてうんざり顔の外国人旅客もいたが、指紋提供などに不満は出なかった。一方、空港関係者からはテロの抑止効果に否定的な声も漏れた。 入国審査場では、到着便が相次いだ午前八時ごろからの約三十分間、長蛇の列ができた。指紋の読み取りや顔写真の撮影がスムーズにできず、警告音が鳴り響くケースもあった。 到着ロビーでオーストラリア人の教師ジェイク・ハイリッヒさん(33)は「全く気にならない。安全には必要なこと。理解できる」。台湾人女性(31)やインドネシア人男性(45)らも「必要なこと」「とても良い」と歓迎した。だが、オーストラリア人のポール・ムンテンさん(42)は審査端末の故障で「旅客機を降りて到着ロビーに出るまで一時間半かかった」とうんざりした表情。 一方、空港関係者らの間では、新システムによる不法入国防止に期待が高まる半面、テロ抑止効果については疑問視する声が聞かれた。 ある入管職員は「指紋で本人確認ができ、偽造パスポートによる不法入国が減るのでは」と推測。十月に発覚した不法入国事件の外国人は、改正入管難民法の施行前に入国しようとしていたという。「密航グループに危機感を抱かせているようだ」と期待を寄せる。 入管のテロ関係者リストは、国連や国際刑事警察機構(ICPO)の情報などに基づくが、保有する指紋データは「ささやかな規模」と法務省関係者。「一番大きいのは心理的な抑止効果」といい、テロリストの発見には懐疑的な反応。成田国際空港会社幹部も「中東などでテロリスト予備軍が次々と生まれている中、指紋データを集めきれるのか」と実効性に首をひねった。 法務省前で外国人ら抗議 外国人の入国審査で指紋と顔写真の提供を義務付ける改正入管難民法の施行を受け、アムネスティ・インターナショナル日本などの人権団体が二十日、東京都千代田区の法務省前で抗議行動をした。 正午から始まり、約七十人が参加。指紋採取の対象となる人さし指をかたどった風船や「STOP!」と書いたプラカードなどを手に「人権侵害だ」と抗議の声を上げた。 アムネスティは「改正法は外国人の管理、支配を強めるものだ」と批判し、制度の即時中止を求めている。 (2007.11.20 東京新聞) |
【中部国際空港】 中部でも入国外国人の指紋採取 「当然」「懸念も」 中日新聞 2007年11月20日 ◆全国の空港・港で改正入管法施行 十六歳以上の外国人を対象に入国審査で指紋と顔写真の提供を義務付ける改正入管難民法が二十日施行され、全国の二十七空港と百二十六の港で運用が始まった。入国時に「生体情報」を採取するシステムの導入は米国に次いで二番目。政府はテロ対策を理由に掲げているが、日弁連などは「犯罪捜査に際限なく利用される恐れがある」として見直しを求めている。 この日は、到着便のある中部国際空港など二十三空港と大阪港など五港で実施。法務省によると、午前九時現在、指紋の提供を拒んだりパスポートの偽造が判明したりして入国拒否となった外国人は一人もいない。 採取された生体情報は、過去に強制退去処分を受けた外国人のほか、国際刑事警察機構(ICPO)や日本の警察による指名手配者など、計八十万-九十万件の生体情報データベースとその場で照合。一致すれば、強制退去処分を受けたり、警察に通報されたりすることがある。 ◆中部、静かなスタート ■空港 中部国際空港では、午前六時すぎに到着したバンコク便から新システムによる入国審査を実施。対象となった外国人からは指紋提供や顔写真撮影の審査を歓迎する一方、戸惑いの声が聞かれた。 到着した乗客は指紋を読み取るスキャナーに両手の人さし指を当て、さらにモニター上部のデジタルカメラで顔写真を撮影した後、従来の対面審査に臨んだ。 審査時間が従来の倍近くかかると予測した名古屋入国管理局中部空港支局は入国審査官を六人増員し、二十六人体制に。さらに八人の案内係を配した。午前中は到着便が少ないこともあり、目立った混乱はなかった。 フランクフルト便で観光のため来日したスペイン人男性(39)は「テロは国を超えた問題。指紋照合も当然だし、時間も五分程度で済んだ。安全のために、とてもいいシステムだ」と語った。 ソウル便で着いた韓国人男性(45)は「テロは国際的な問題。過去(の指紋押なつ問題)とは全然違うし、もっと厳重にチェックする国もある」としながらも「心理的にはいいものじゃないね」と苦笑い。別の韓国人男性(46)も「機上で案内があれば、心の準備ができたのに、いきなりで驚いた」と話していた。 中部空港では年間約四十万人の外国人が対象になるという。 ■永住者 日本に住んでいる一般永住者も海外から帰った場合に指紋採取と写真撮影が義務づけられる。 豊橋ブラジル協会のタナカ・アルシーデス・ヒデオ会長(46)=愛知県豊橋市=は「犯罪減少の効果が明確でないと納得できない人もいるのでは」と制度の意義の説明不足を心配した。 ブラジルではIDカード発行時に指紋を採取されるので抵抗感は小さいというが「採取の習慣がない国の人はもっと複雑な心境だろう。入国が煩雑になり、トラブルが増えるかも」と懸念した。 (2007.11.20中日新聞) |
社説 新入国審査 人権への思慮に欠ける(11月20日) 北海道新聞 2007.11.20 来日する外国人に指紋の採取と顔写真の撮影を義務づける制度がきょうから始まった。 テロリストの入国阻止が目的だ。指紋や写真は、テロリストや犯罪者などのブラックリストと瞬時に照合し、問題がある人や拒否した人は入国できない。 水際でテロを防ぐ趣旨はわかる。しかし、来日外国人の大半にあたる年間七百万人を対象とし、犯罪の被疑者のように指紋を採取するのは、プライバシーなどの人権上、疑問が残る。 当局の恣意(しい)的、政治的な判断があってはならない。 改正入管難民法に基づく制度だ。三つの点で慎重な運用を求めたい。 まず、指紋や顔写真資料の保存期間の定めが法律にないことである。入管は「何年と定めると、それを超えてから入国することになる」と説明する。 入国時の指紋採取は米国に次いで二カ国目だが、米国では七十五年間保存される。その人の一生ということだ。 警察が捜査に必要な時、いつでも使うようになりかねない。個人情報が漏れる恐れも高まる。本来は照合後、すぐに消すべきだ。 第二に、改正法が法相に与えた「テロの実行を容易にする行為を行う恐れがある」人への強制退去権の使い方である。テロ行為の結果ではなく、政府の予測だけで判断される。 改正法に関する講演で鳩山邦夫法相が「友人の友人がアルカイダ」と発言した。根拠は、法相の友人が、インドネシアのバリ島クタ地区で爆弾テロが起きた二カ月前に、ある人から、何か起きるのでクタ地区には近づかないよう注意されたというだけだ。 友人の話を基に、このある人を「アルカイダ」と決めつけたのは軽率すぎる。もし、この程度で法相が強制退去権を乱用するなら、話にならない。 第三に、ブラックリストの正確性を保つことだ。米国では国民の五百人に一人が、テロ容疑者のリストに登録されている。あのノーベル平和賞のネルソン・マンデラ氏も、リストに載っていて、入国できなかったという。 新制度では在日韓国朝鮮人ら特別永住者などを除き、日本に出入国する十六歳以上の外国人すべてが対象になった。道内在住の外国人の七割も対象だ。テロとは無関係の市民を誤ってリストに掲載することは許されない。 一方、外国人労働者を雇用した時や離職時に氏名、在留資格などの届け出を企業に義務づけた改正雇用対策法も先月施行された。外国人の個人情報を入国から就労まで国が管理し、外国とも情報交換できる法体系が整った。 不法入国者を減らす狙いがあるようだが、管理のあまりの強化は、外国人に日本への嫌悪感を呼び起こしかねない。人権を侵さない入国審査方法をさらに工夫するべきだ。 (2007.11.20 北海道新聞) |
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