常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

アサツキ酢味噌和え

2012年04月15日 | グルメ


晴れ、最高気温18℃。春を実感、畑では汗が出る。
アサツキはぐんと伸びて、これ以上置いておかれないと判断し、すべて収穫する。ニンニクも一段と伸び、ニラの赤ムラサキの新芽が成長を始めた。

アサツキは豪雪地帯の野草だ。ネギの仲間で根を切って水洗いをしていると目から涙の出る刺激臭だが、この風味は春を告げる風味である。昨日、五七日の法事でお参りしてきた尾花沢のスミ江叔母さんは、生前春先に訪れたとき雪のなから黄色いアサツキを掘り出し、手の切れるような沢水で洗い、根を切ってお土産に持たせてくれた。心のこもった雪深い里の進物はいまもなつかしい思い出として心中深く刻まれている。

その黄色いモヤシのようなアサツキは、日に当たるとみるみるうちに緑色に変わっていった。口にしたときの甘み、口中に広がる風味は忘れられない味となった。
それから何年かして、行きつけの床屋の主人からアサツキ掘りの話を聞いた。スコップをかついで雪のある里山へいき、アサツキを掘ってくるのだと言う。「木の周りは雪が早く融けているのよ。そこでアサツキを見つけたら、雪を掘って、まだ黄色いアサツキを採ってくるんだ。俺は根を取ってさっと湯がいたのをだし汁に卵をといてソウメンを啜るように食べるのが好きだね。春の精気がいっぱいでね、あそこがビンと立つんだよ」

雪の下から日を求めて成長を続ける生命力。それを食することによってその力をもらうのだ。この年から雪の中のアサツキ掘りが春の恒例行事となった。掘ったアサツキを網に入れて根を洗って家に持ってくる。妻は根を切りゴミをとるのに2時間も3時間もかけて、小鉢に盛ってたった一回の晩酌の友ができる。こんな手間ひまをかけた献立を選ぶのは、春を迎えた喜びを満喫したいがためだ。

去年、借りた畑にアサツキの鱗茎を植えつけた。
春の訪れとともね、アサツキの緑だけが畑の隅を彩っている。今年のそれは野草とは違って根も太く、扱いも格段に楽だ。アサツキの処理をことしは妻に代わって自分がやってみた。楽なはずの根きりも一人でやると、足も手も痛くなる。しかし、一皿の酢味噌和えはその労に報いるに十二分であった。
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