曇り、最高気温18.6℃。朝、3分割きだった坂巻川の桜は夕方には満開の様相を呈した。遅い春は、いろいろな花を一度に咲かせる。梅、木蓮、大山桜、それから椿に山桜、目を下に落とすとスイセンの黄色な花が風に揺れている。
里山ではアケビの芽、ナンマイ葉、花ワサビなど山菜が出始め、鶯の鳴き声も聞える。畑ではアサツキが伸びきり、ネギはボンボをつけはじめた。
これほど春のメニューが出揃うと冬の生活に馴れていたリズムが狂い、急に忙しく感じる。
山形には桜が多い。千歳公園、霞城公園、千歳山公園、馬見ヶ崎川原など市内の至るところで桜が見られる。大学や公立学校の庭には大概、桜が植えてある。だが人々はこの桜だけでは満足しない。酒田日和山公園、鶴岡公園、米沢上杉神社、烏帽子山公園、長井久保桜などなど桜を求めて足を伸ばす人は多い。
さらに、角館、弘前と北へ桜前線を追いかけると、春は桜だけで過ぎてしまうこともなしとしない。なぜこうも、人は、特に日本人は桜に魅せられるのだろうか。『枕草子』で清少納言は「桜は花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる」と山桜を賞美し、本居宣長は
「しきしまのやまと心を人問わば朝日に匂ふ山桜花」と山桜の美しさを詠んでいる。
いま開花を迎えたのはソメイ吉野で、この種は明治になって東京染井の植木屋から全国に広がったもので吉野の山桜とは別種である。