常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

案山子(かかし)

2012年08月20日 | 農作業


家庭菜園をやってみて気づいたことがある。それは雀やカラス、鼠など人間のまわりに棲む小動物の威力だ。雀が田圃で米を食べる量は、年間1万トンといわれている。群れをなした雀が田圃に舞い降りると、稲穂を激しくゆらして穂を啄ばむ。人が近づくと、察知した群れはいっせいに飛び立つ。

1万トンといえば、日本人が1年間に消費する米が90キロといわれているから、実に166万人分の一年分の米ということになる。こんな事態に農家としても、手を拱いているわけにはいかない。田一面を覆うネット、稲穂の上をひらひらと躍るリボン、時間を置いて鳴る爆発音とまさに総力を挙げて取り組んでいる。そんななかで昔ながらのかかしの出番は少なくなっているようだが、たまに田の端で見かけると懐かしくなる。

雀が食べにくる時期は、本能的な勘によっていると言わざるを得ない。トウモロコシなら実が入って甘みが加わるころ、米では実が熟す前のミルク状の稲穂に来る。穂が出て花が終わる8月の末には案山子が立てねばならない。だが、その効果は限定的だ。はじめはかかしを恐れて寄ってこないものの、わずか1週間もすると、かかしを無視して田に舞い降りるようになる。

雀らとともに案山子を侮れり 徳永山冬子

かつて、小学校の唱歌で「かかし」が歌われていた。

山田の中の一本足の案山子
天氣のよいのに蓑笠着けて
朝から晩までただ立ちどほし
歩けないのか山田の案山子

山田の中の一本足の案山子
弓矢で威して力んで居れど
山では烏がかあかと笑ふ
耳が無いのか山田の案山子

こんな唱歌にも、かかしを役立たずと思う気持ちが込められているような気がする。かかしの語源を探ってみると、「かがし」であり、動物の死骸や魚を焼いた悪臭をかがせて鳥追いをした。節分の鬼払いに鰯の頭を戸口に立てる風習は近年まで残っていた。そんな昔の知恵が、かかし生み出したのだろう。

あまり見かけなくなった「かかし」が、「かかし祭り」などの行事で、観光客を集めている。上山市の「かかし祭り」は9月15日~23日まで開催される。

さだまさしの「案山子」には、子を都会に送り出した切ない親の心が唄われている。

元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか
寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る

山の麓煙吐いてる列車が走る
凩が雑木林を転げ落ちて来る
銀色の毛布をつけた田圃にぽつり
置き去られて雪をかぶった
案山子がひとり

お前も都会の雪景色の中で
丁度あの案山子の様に
寂しい思いをしてはいないか
体をこわしていないか
コメント
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