常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

白梅

2014年04月06日 | 万葉集


天平2年(730)2月13日、大宰府にある正三位大友旅人の邸で、宴会が開かれた。この宴席で、いま開く梅の歌を出席者が詠んで、興を盛り上げる試みが行われた。宴席に連なった面々は大宰府に任免された官人のほか僧や身分のある人々であった。

万葉集巻の五には、梅花32首とその序文を収めている。序文は、格調たかい四六文で、宴会の風雅を伝えている。

「初春の佳き月で、気は清く澄みわたり風はやわらかにそよいでいる。梅は佳人の鏡前の白粉のように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香のように匂っている。明け方の峰には雲が往き来して、松は雲の薄絹をまとってきぬがさをさしかけたようであり、夕方の山洞には霧が湧き起こり、鳥は霧の帳に閉じこめながら林に飛びこうている。」

こんな梅が咲く邸の自然に、感性をはたらかせながら、歌を詠むという試みが万葉に時代にあったことに驚かされる。それは、貴族という階級のなせることであったかも知れないが、美への感性は人間に本来備えられていたことの証でもあるように思われる。この宴席で、宴会の主人である大伴旅人は、こんな歌を詠んだ。

我が園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも 大伴旅人

梅の花が散るのを、空から降る雪に見立てている。梅が白梅であったことが、この歌で分かる。古来、日本にある梅は白梅であった。平安朝になって紅梅に人気が集まるが、これは唐の国から渡来したものであった。

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