この季節に山に行くと、日当たりのよい斜面に、カタクリの群生に出会う。薄紫のその花の姿は、こびとが踊りに興じているような楽しい雰囲気がある。今日は、そんな群生ではなく、山の道端に4、5本、日を避けてうつむきかげんのカタクリに会った。あまりの好天に、山菜が出始めたのではないかと、妻と里山にでかけたのである。
今日収穫した山菜は、フキノトウ、ナンマイバ、ヤマミツバ、ヤマニンジンである。思いがけず、丁度食べごろのヤマミツバがビニール袋にいっぱい採れたのでうれしい。この季節の山菜には、独特の香りキドサがある。食卓にのせると、春の香りに満ちて、今日元気で生きている喜びを感じる。
ところで、カタクリは万葉の時代には、「堅香子(かたかご)」と呼ばれた。大伴家持はこの花を詠んだ歌がある。
もののふの 八十娘子(やそおとめ)らが 汲み乱ふ 寺井の上の 堅香子の花 家持
伊藤博氏の歌意を記す。
たくさんのおとめたちが、さざめき入り乱れて水を汲む寺井、その寺井のほとりに群がり咲く堅香子の花よ。
万葉集で詠まれるカタクリはこの一首でけである。それだけに、この時代から今にいたるまで咲き続けてきた、はかなく見えるこの花の生命力にあらためて驚愕する。